そこそこ優れた走行性能を持つ点は長距離移動のお供として高得点なアコードですが、その良さをぶち壊すような障壁が存在していました。それはオーディオが10分と聞いていられない状態なのです。長距離移動時にオーディオがダメなのは、個人的にかなりNG・・・。まずはこの部分をどうにかしましょう。
オーディオが聞いていられない!

具体的な状況はどんなものか。引き取り直後の状態は中音域から高音域が耳に突き刺さる感じがひどく、かつ全体的に籠もった音。最初は我慢して聴いていましたが、10分ほどで気持ち悪くなりオーディオOFFに。ヘッドユニット(カーナビ)の音質調整で何とかなるか?とアレコレ弄ってみましたが効果なし。さすがにこれはたまらんぞ。
そういえば、アコード購入前に元オーナーAさんから『スピーカーを替えたけど、思ったほど音が良くならなかった』という話を聞いていましたが、それにしてもひどい音です。長距離移動のアシとなるクルマですから、せめて普通に聞ける状態であってほしいもの。
原因を探ってみよう
社外スピーカーに替えて音質が落ちるなんてにわかに信じがたく、何かがおかしいと考えます。スピーカー本体にアクセスする前に、現況から何が起きているかを探ります。
まず疑われるのがスピーカーの故障です。ヘッドユニットでフェーダー・バランスを弄ってチェックしたところ、音が鳴らない・音が明らかにおかしいという状態ではありませんでした。その際、Rr側だけ鳴らすと前述の気持ち悪さが和らぎ、Fr側だけ鳴らすともの凄く気持ち悪い音になることが判明。問題はヘッドユニットやアンプに起因するものではなく、Frスピーカーが悪さをしているっぽい。
そのとき『社外スピーカーに替えても音がよくならない・・・』というAさんの言葉を思い出します。替える前は大丈夫で、替えたら微妙になった・・・。ふと脳裏に『配線が間違ってるのか?』という疑念がよぎります。スピーカーのプラス・マイナスを逆に接続した場合、音は鳴るものの、気持ちの悪い音になると聞いたことがあります。
そこで、以前購入したカーオーディオ調整指南本に付属の調整用音源トラックに正相・逆相チェックがあるので再生してみると、やはり正しくヒアリングできませんでした。
スピーカー配線をチェックしてみる

原因の見定めが出来たので、早速内装をバラしてスピーカーをチェックしましょう。


ツイーターパネルを外し、ドアオープナー部とアームレスト部に隠れているネジを5本外します。あとは内張り剥がしを用いてクリップを外せばOK。アコード特有の工程はなく一般的な内装剥がしと同じ手順です。

5分ほどでドア鉄板とご対面・・・と思ったらサプライズ。デッドニング施工済みなのか!ずいぶん静かだなぁと感じた理由はこれだったのか・・・。使用している部材や配置を見る限り、DIYで作業した様子。もう少しアレコレ出来そうですが、今はとにかくスピーカーの現況チェックに専念しましょう。

スピーカーも外して配線チェックすると、またまたサプライズ。ドア内張り外した時点で社外品が装備されているのはすぐわかりましたが、外したスピーカーの型番を見てびっくり。パイオニアの上級モデルが装備されています。新品で3万円オーバーの代物なのに、こんな音質なのか・・・?いや、きっと配線がおかしいんだそうに違いない(と、願いながら作業


さて、本当に配線が間違っていたのか。結果から言うと、想像どおり正しく接続されていませんでした。助手席側は正しかったのですが、運転席側は配線が間違っていました。気持ち悪さの要因はこれだったのかも。
ココからは推測ですが、配線間違いの要因は純正スピーカー配線の変換ハーネスかもしれません。と、いうのも配線色がパイオニアスピーカーの配線と逆になっているからです。パイオニア配線はプラスが『白黒』でマイナスが『黒』なのですが、変換ハーネスはその逆。接続部の平形端子はプラス側が幅広でマイナス側が幅狭なのは正しいのですが、これは混乱の元だなぁ(実際、パッと見て混乱した)
こういうときはスピーカー交換時に配線図を入手しておくのが正解でしょうが、億劫ですしね・・・。ちなみに変換ハーネスはそのまま使用できますが、後に『訳わからん!』となりそうだったので、近所のアップガレージで配線色が一致するものを購入し交換しました。
配線が正しくなったところで再度音のチェック。気持ち悪さはなくなりましたが、まだ中高音域は耳にビリビリと刺さる状態で聞き疲れする音はそのまんまでした。


もしかしたら共振しているのかと思い、念のため純正位置に設置されたツイーターをスポンジテープでしっかり固定してみましたが、根本解決にはなりませんでした。
アンプは悪くない?
出口が見えないのでネットリサーチしてみると、同様に上級スピーカーに交換しても音質向上を感じられないという感想がぼちぼち見つかります。解決策として、トランク内に配置された純正アンプを社外アンプに交換する手法が紹介されています。小型のものであれば純正配線を活かして設置できるとのこと。
詳細は後述しますが、純正アンプはパイオニア製。音質が悪いなんてちょっと信じがたいなぁと思いながら、実際聞こえてくる音は悪いという事実・・・。本当にそうなのかを検証するため、アンプ交換を進める前にiPhone側の音声出力を調整してみました。ミュージックAppの設定項目にプリセットのイコライザーが選択できるので、色々試してみると、
あら、まともな音で聞こえる・・・?
スピーカー能力を発揮した音が再生されるではありませんか。どことなくぼやけた具合が解消しスッキリと聞ける音質に改善。もしかしてアンプ性能が悪いのではなく、ホンダの他モデルでも汎用的に使われているスピーカーに合わせた周波数特性なのかもしれません。
だったら出力側を弄ってしまえ

完璧ではないでしょうが、そこそこ聞けるので私レベルはこれで十分。アンプ交換するまでもないと判断し出力側で調整を突き詰めることにしました。
ただ、ひとつだけ障壁となるのはiPhone側の制約で全ての音声信号にイコライザーを適用できない点。前述のイコライザー設定はミュージックAppでの再生に限られるため、YouTubeやRadikoなどのAppは調整ができません。もっとも、ミュージックAppもプリセットのイコライザーしか選択できず、ユーザーレベルで細かく調整することもできません。
新たにAndroidスマートフォンを調達
それについて調べてみると、Androidであればシステムレベルでイコライザー調整が可能なようなので、モノは試しと思いAndroidスマホを調達しました。アンプ買ったほうが安いんじゃね?とも思いますが、小型アンプを買ったとしても別途DSP買わなければ調整できないので・・・。
購入したのは2019年発売のSony Xperia 5です。中古品流通が多く1万円前後で購入できる機種だったことに加え、Miracastに対応している(今後、活用を検討)ことからこれを選びました。

このモデルにはDolby Atmosを搭載、システムレベルでイコライザー調整可能ですが、調整バンド数が少なかったので別途有料アプリの『Poweramp Equalizer』を導入しました。
こちらはグラフィックEQ・パラメトリックEQどちらも対応しており、細かな調整が可能です。通常状態では一部のアプリしか適用できませんが、ADB環境からDUMP権限付与することでほぼ全てのアプリに適用することができます。
簡易的に周波数特性を計測→調整

イコライザー調整の前に現在環境の周波数特性を計測します。ピンクノイズを再生しスペクトラムアナライザーを用いて計測した結果はこんな感じ。思っていた感想どおり、耳に刺さる2〜4KHzが過大です。200Hz以下の低音域も強いので、いわゆる『ドンシャリ』な音質です。
長く聴いても疲れないフラットな特性に近づけるため、1時間ほど試聴と調整を繰り返して『まぁ、こんなもんかな』レベルに近づけます。ただ、あれこれ調整しても2〜4KHzのピークが消せずビリ付く印象が消せないため、他の音域でカバーして聞き疲れしないように仕上げました。
さすがにコレで素晴らしい音質を手に入れた・・・訳ではありませんでしたが、まずはこれで運用してみます。やっぱりダメかなと思ったら、社外アンプ設置に踏み切りましょう。
オマケ:日本・海外仕様アコードの違い

さて、オーディオ関連について調べていたところ、実は日本仕様と欧州・アメリカ仕様では装備レベルが異なっていました。その違いを以下の表にまとめています。
日本仕様 ナビなし | 日本仕様 ナビあり | 欧州仕様 標準 | 欧州仕様 Premium | Acura仕様 標準 | Acura仕様 ELS | |
---|---|---|---|---|---|---|
スピーカー数 | 6 | 6 | 6 | 10 | 7 | 10 |
Frドアスピーカー×2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Aピラーツイーター×2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
リアドアスピーカー×2 | × | × | × | ○ | × | ○ |
リアトレイスピーカー×2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
センタースピーカー×1 | × | × | × | ○ | × | ○ |
ウーファー×1 | × | × | × | ○ | ○ | ○ |
別体アンプ | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
スピーカーサプライヤー | フォスター | フォスター | フォスター | パナソニック | フォスター | パナソニック |
ヘッドユニットサプライヤー | パナソニック | パイオニア | パナソニック | パナソニック | パナソニック | パナソニック |
アンプサプライヤー | – | パイオニア | – | パナソニック | パイオニア | パナソニック |
並べてみると、日本仕様の残念なこと・・・。モデルチェンジに伴う価格上昇を避けたかったのかもしれませんが、どうしてこうなってしまったんでしょうか。そしてここまで作り分けしているのもなかなかですね。日本仕様のナビは他地域からするとガラパゴス的な仕様でしょうから仕方がない部分もあると思いますけど、せめてAcura標準ぐらいの仕様にして欲しかったなぁ。
日本仕様のコンポーネント



日本仕様と欧州ナビなし仕様のスピーカーはフォスター電機製。初めて知るサプライヤーです。事業の主軸はオーディオ製品のOEM製造だそうで、有名メーカーのイヤフォン・ヘッドフォン製造を担っているとのこと。車載スピーカー分野では世界シェア10%というのですから、知っている人は知っているサプライヤーなんでしょうか。
フロント・リア共に同じ品番のものが用いられており、17cmネオジム磁石採用のものが装備。フィット・ステップワゴン・オデッセイ・インサイトなど幅広い車種で採用されているものです。その点から見ると特に拘って採用されたものではないでしょう。
ナビなしモデルはヘッドユニットにアンプを内蔵しているのに対し、ナビありモデルはパイオニア製の別体アンプを装備しています。意外なのが、ツアラー用と別品番である点。ハードウェアは一緒でしょうが、それぞれの車体に合わせたチューニングがされているのではないかと推察します。
そのことから、純正アンプはアコードセダンの室内環境とフォスター製スピーカーの特性に合わせた設計がされていると考えたほうが自然。そうであれば、スピーカーを替えても音質が改善しないのが頷けます。
海外仕様のコンポーネント

ヨーロッパ仕様・アメリカ(Acura)仕様のうち、上級オーディオ装着モデルはパナソニック製コンポーネントで統一されています。日本仕様との違いは単純にスピーカー数だけ増えているだけと思ったらまったくの別モノです。ヘッドユニット(ナビ)はそれぞれの地域に合わせた仕様と思われます。
ついでに、パイオニア製アンプとサブウーファーを搭載しているAcura標準仕様のアンプ実物写真をチェックみました。結果、日本仕様のものとはコネクタ形状から違うので、単純なポン付けは難しいと思われます。
流用は難しそう・・・

仕様の違いがわかったとして、海外仕様に準じたものにできるかどうかを検討します。前述のとおり、ヘッドユニットやアンプは全く別モノのため、純正位置にスピーカーを追加し別体アンプで鳴らすのが現実的な解でしょう。

まずセンタースピーカー。日本仕様のダッシュボードにもスピーカーグリルは存在します。中は単なる空洞になっているようですから、物理的には設置が可能です。ただ、ヘッドユニット・アンプ側がセンタースピーカー出力を持っているとは思えませんから、現実的な解としてはヘッドユニット(ナビ)を社外品に交換しないと意味が無いでしょう。
リアドアもスピーカーグリルを装備。ただ、調べた限り配線はされておらず、アンプ部から引き直す必要があります。穴があるならスピーカーがあって欲しいと思うところですが、こちらも純正ヘッドユニットを使うのであればあまり意味がないかもしれませんね。なお、リアトレーがないツアラーはリアドアにスピーカーを配置しています。

現状のヘッドユニット・アンプ環境で現実的な手法と考えるのは、リアシェルフにサブウーファーを設置する案。これならフィルターを設置すれば何とかなりそう・・・と思ったのですが、

実は大きなハードルが。内装側にグリルがない上、その下のリアシェルフに穴が開いていません・・・。欧米仕様としっかり作り分けされていました。穴を開けて設置することは可能でしょうが、さすがに抵抗あるなぁ。やる気を出すならココに設置したいものですが、内装トリムに加えシェルフ補強用?のパフォーマンスダンパー(ウーファー設置モデルのみ装備)も調達する必要がありそう。
ちなみにリアトレー部のスピーカーにアクセスするためにはリアシートの背もたれやサイドボルスター、Cピラー内装などアレコレバラさないといけないようです。てっきり簡単にアクセスできると思っていたら想像以上に面倒な作業・・・。オーリスから外したパイオニア製スピーカーが手元にあるので交換しようと思ったけど、うーん。やる気が出ない。
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