X2とX1(※代車)を乗り回すようになってから約半年経過しましたが、あらためてBMW製FF車について考察しています。
F56系BMW=UKLプラットフォームを使用したモデルは現在F45/46(2シリーズアクティブツアラー・グランツアラー)・F48(X1)・F39(X2)・F55/56/57(MINIハッチバック系)・F54(MINI Clubman)・F60(MINI Crossover)、それから中国専売のF52(1シリーズセダン)と計10モデルが揃っています。
まずはその中でも『兄弟車』の印象が色濃いF48とF60を掘り下げてみます。と、いうのも・・・F48 X1のほうがいわゆる『上級車種』なのですが、装備内容はF60 Crossoverのほうが良いのでは?という疑問にぶつかったから。じゃあ実際にどうなのかを見てみます。
日本で買える両車は装備がどう異なるか?
まず、LCI直後のX1と、同等レベルのMINI Crossover COOPER SD ALL4の装備(抜粋)を比べてみました。
こうして見てみると、そこまで差がないように見えるのですが、実はMINIのほうがオプション装備のラインアップが多いことに気がつきます。基本的な装備(特に安全装備関係)はあまり差がないのですが、上級装備はMINIにだけ装備できるという不思議な現象が。
なぜ、こうなのか?
ここからは完全に私の妄想たっぷり。やはり、BMWのロアーグレードモデルよりもMINIの『プレミアムコンパクト』という商品性を重視しているからに他ならないのでは?と思います。
競合メーカーであるMercedes-BenzやVW、Audiに存在するCセグメントのハッチバックモデルに対抗する形で初代BMW 1シリーズ(E81)がデビューした際は『BMWといえばFR車!』と言わんばかりに、ライバルとの考え方の違いを貫き通したという過去があります。しかもそのE81については、上級車種である3シリーズ(E90)と基本コンポーネントが一緒という内容。
ちなみに、E81の先祖となる3シリーズコンパクト(E46/5)も、その名称が示すとおり中身は3シリーズのまま。当時のCセグメントの雄であるVW GolfやAudi A3などとは異なり、上級車種をベース下級車種を派生させるスタンスを踏んでいました。
一方、BMW製FF車の先駆けとなったMINIは、ROVER時代の名残を存分に感じさせる仕上がりだったものの、一方でリアサスにBMWおなじみのFR車で培ったマルチリンクサスペンションを奢るといった内容で、真面目にFF車を作り上げていこうという姿勢を感じるものでした。
ただ、当時は自前でFF車用エンジンを持たなかったことから、Chryslerと共同開発した(というかほぼ先方に開発、製造してもらった)何の特徴もないペンタゴンエンジンを搭載していたのを考えると、FF車が本流となることにBMW自ら半信半疑だったのでは?と思います。しかしながら、ご存じのとおり、初代MINIは全世界で大ヒット。
そこで、高コストと言われていた第一世代R50を早々に引退させ、2代目となるR56へモデルチェンジ。内容としては、いよいよBMWが本気でFF車に取り組む気になったのかと思わせるものでした。
その特徴として、車体はR50をベースにより生産効率を高めたものに刷新。エンジンも初代の凡庸なエンジンから、PSAグループと共同開発したプリンスエンジンに置き換えられ、さらにモデル中盤では当時のBMWが持っていた最新技術(バルブトロニックやダブルVANOSなど)をこ追加搭載し『よりBMWらしい』エンジンに進化。同時に、ClubmanやCountryman、CoupeにRoadsterなど、矢継ぎ早に派生車種を増やすことでラインナップを増強、より一層FF車の知見を深めていったと思います。
2013年には3代目MINI(F系統)がデビュー、その1年後2014年にはF48 2シリーズアクティブツアラーがデビューしたことで、ようやくBMWとMINIのラインナップがUKLプラットフォームを介して合流したわけですが、それでもプロダクトの優先度はまだまだMINI側にあったのでは?と考えています。
かつては『MINIというクルマはあくまでBMWブランドの入門車。MINIに馴染んだら顧客はBMWへ流れていく』なんて声がよく聞かれたものですが、2シリーズアクティブツアラーやX1などの前輪駆動BMWより、やっぱりMINIシリーズのほうが気合いが入っているという印象を受けます。
むしろ、各種オプション装備やボディカラー、ホイールの選択肢を増やし、顧客ひとりひとりの好みに合わせられる(=結果、めちゃ高い買い物になる 笑)MINIこそ、BMWにとってはありがたい商品群であり、その生産性を高めるために、2シリーズツアラー、2代目X1、そしてX2とモデルを増やしていったのでは?とさえ思っています。
その証拠に、F56がデビューした当初、自動ブレーキやACC、ヘッドアップディスプレイなど、当時のBセグコンパクトカーとしてはかなり珍しい先進装備が一気に搭載されたのは、BMWのボトムラインナップにも同様の装備が搭載できる=量産効果を狙ったのでしょうか。
今後はどうなるのか?
一方、F45 BMW2シリーズアクティブツアラーやF56 MINIがデビューした頃と現在では、BMWの前輪駆動車に対する『向き』がだいぶ様変わりした印象を受けます。
と、いうのも、UKLプラットフォームの活用による商品群の充実ぶり、世間のBMWに対する印象、後輪駆動でないBMWに対するネガティブ意見の減少、そしてディーゼル問題に端を発した電動化への急速なシフト・・・これらを考えると、もはやBMW内でのMINIの立ち位置が少しずつ変化(主流から伏流へ)してきているのではないかな?と考えさせられます。
一説によれば、F56系MINIの開発については、BMW本体が取り仕切るのではなく、外部開発会社に投げたと言われており、故に装備がBMWよりも充実しているという説があります。ユーザーとしては、誰が開発しようが良いモデルであれば関係のない話なんですけど・・・
先日デビューした1シリーズはUKLの進化版プラットフォームであるFAARを採用し、上位モデルと何ら遜色のない仕上がりになってきたところを見ると、既にBMW製FFモデルの主流はBMWボトムラインの商品群にスライドした、と思っております。
その証拠として、噂レベルではありますが次期MINIは原点回帰?で小型化されるとの情報が。それに使用するプラットフォームはFAARではなく、中国のBMW合弁企業と開発する新型プラットフォームではないか?とされています。
また、別の推測として、ライバルであるMercedes-Benzと小型車を共同開発するのでは?という向きもあります。既にBMWとMBは、自動運転分野やカーシェアリング分野で提携を進めていますが、もしかすると次期Aクラスと1シリーズは同じベースになるのでは、と噂されています。
もし両方とも事実だとするのであれば、MINIの立ち位置とBMWのボトムラインの立ち位置は大きく変化していくことは確実。いったい、どうなることやら・・・。
コメント