F60の定期点検に際し、今回はBMWの代車が用意されました(嬉)…前回、借りて早々に返したからでしょうかね?で、貸し出されたのはいつものF48 18dxではなく珍しい1台でした。
車名:BMW 218d xDrive グランツアラー Luxury
製造年月:2019年8月
エンジン:2L 直列4気筒DOHCディーゼル(B47C20B)
駆動方式:AWD
ボディカラー:ミネラルホワイト(メタリック)
主なオプション:コンフォートPKG・アドバンスドアクティブセーフティPKG
タイヤ:標準OE ブリヂストンTURANZA T001 RFT 205/55R17
おぉグランツアラー。こうやって接しないと存在を忘れてしまう1台。兄弟車であるF45 2シリーズアクティブツアラーは4年前にレンタカーで借り首都圏を3日間乗り回したことがありましたが、こちらは初めて乗ります。
モデル末期+1代限りでディスコンのグランツアラー
F系MINI・X1・X2と同じUKL2プラットフォーム兄弟の中で、一番長いボディサイズを持つのがこの2シリーズグランツアラー。デビューから6年以上が経過しモデルライフはもうすぐ終わり。なお、噂によると次期モデルはアクティブツアラーと統合され、1代限りでディスコンとのこと。BMW初の3列シートを有するMPVモデルとして注目を集めましたが、競合モデルが多い日本ではあまり売れている様子がありません。ですが、新興国を中心に全世界ではそれなりに売れているモデルのようで。
冒頭に記したとおり、ホイールベース値2,780mmというスペックはUKL2プラットフォーム兄弟の中で一番長いスペック。兄弟車F45アクティブツアラー、F48 X1やF60 クロスオーバーが揃って2,670mmなので、100mmも長いことになります。また全長も4,585mmと堂々のサイズで、F48が4,455mmなので130mmの増加です。重量に関しても、ガソリンエンジンの218iで1,590kg、ディーゼルエンジンの218dxで1,740kgとなり、前者はX1 s18iよりも70kg重く、後者はバッテリーを搭載したF60 PHEVより30kgほど軽いレベル。かなり堂々とした車体ということがわかります。
国内導入されているパワートレインは3種類。エンジンはガソリンがB38A15A+7速DCTの1種、ディーゼルがB47C20Bに8速AT、駆動方式違いで2種が用意されていますが、車体のスペックを見る限りはディーゼルのほうがマッチしていると思って間違いなさそう。
これが3列シート車?
乗った感じの結論を先に言うと、スペック上ではUKL2兄弟と差があるのにも関わらず走らせた印象は劣る部分がほとんどなく、普段どおり運転してる分にはあまり差が感じられなかったというものでした。
まず動力性能ですが、最大トルク350Nmを1,750rpmで発揮するB47C20Bの恩恵でノロさを感じることはありません。低速域のトルクは十分以上ですし、中速域からの追加速も『遅い!』という感覚にはならず、街乗りレベルでは必要十分以上の性能を有しています。ですが、やはり重量級であることが災いし燃費が伸びません。2日間の貸し出し期間で7名フル乗車を試す場面はありませんでしたが、大人4名乗車でもガソリン仕様では物足りない気がします。ちなみに、他のBMWモデルと同じくディーゼル特有の音振動はかなり遮断されており、乗っている限りはディーゼル車であることを気がつかされない仕上げも健在なのが良いところに思います。
乗り心地について。現在F45/46にはM仕様の設定がなく全てLuxuryトリムのみの用意となっています。そのため足回りも非Mのコンフォートなもので、タイヤ・ホイールも17インチと控えめのスペックのものが奢られています。その影響か、車体の重量を考えると良好なレベルを有しています。ロングホイールベースの恩恵もあり、車体全体の動きはゆったりとしており、コンフォートさとスポーティの中間に位置した乗り味を感じます。ただ、許容範囲ではあるものの荒れた路面での揺すられ感や突き上げ感は多少ありますが、どちらもあからさまに不快なレベルではありません。この仕上がりであれば、ファミリーカーとして使用しても家族から不満が出ることはないでしょう。
一方、ハンドリング性能はMPVでもBMW特有のダイナミクスは健在。MPV車にありがちな「のったり」や「ふらふら」がなく、X1やX2、F60と比較しても明確に劣っていることはありません。パワステの感覚も兄弟と同じく不自然さが少なく、当初私が想像していたものよりはるかに良いレベルに仕上がっておいました。長いLWBを持つ車体を転がしているネガを感じないのがとても良い感じです。それに、国産ミニバンでありがちな車体からのきしみ音も皆無なのが素晴らしいですね。
運転環境は兄弟車とそう変わらず、MPVにしては異例の低く座らせる設え。その上、ドライビングポジションが適正ポジションを取れるのがとても良いポイントです。この点、他メーカーのMPVは「諦める」部分が必ずひとつふたつ存在するのですが、それが一切ないのはとても良いポイントに思います。ミニバンを買っても乗ってガッカリしないという点では、私のようなミニバン嫌いな人間には持ってこいの1台ということでしょう(笑
シートは久しぶりのコンフォートタイプ。以前借りたF48のときもそうでしたが、座り心地がラクで、コレはコレですごく良いシート。言い換えれば、M仕様のシートがちょっとやりすぎ感が漂っているとも言えます。ランバーサポートはオプション(セレクトパッケージ)なのですが、無くても大丈夫かな?というレベル。なお、LCIでフロントシートが改良され座面のサイズが大きくなったとのこと。そう言われてみれば、以前レンタカーで借りたF45よりもシートに不満がないかも。
内外装はさすがに古さを感じる
内外装は旧世代BMWのデザインやコンポーネントのため、かなり古くさく見えてしまうのは仕方がないですが、もうすぐ世代交代ですしね。インテリアについても、ダッシュボードから見える操作系はF48やF39と全く同様。見慣れたスイッチが並んでいます。ちなみにシフトレバーは機械式のものが。他のUKL2兄弟は皆電子シフトレバーになったのに、ココはアップデートされなかった模様。
iDrive画面も8.8インチのまま。兄弟車は大画面化を果たしていますから、放っておかれているってことでしょうかね?(笑)ちなみにカタログを見て???だったのですが、コネクテッドドライブサービスがセレクトパッケージオプションに付属となっていますが、誤植なのかな??
あれ?と思った点がもうひとつ。ヘッドアップディスプレイがMINIと同じコンバイナー式なんですね。フロントガラス投影式とどちらが見やすいか?という問題がありますが、視線移動の少なさではフロントガラス投影式のほうが利点があります。なお、表示される情報はどちらも一緒なので、機能的には問題ありません。
ヘッドライトはアダプティブ機能のないLED。そのため、ライトスイッチ横に光軸調整ダイヤルが備わっています。本国ではアダプティブ仕様も存在していますが、日本仕様ではオプションの用意すらありません。本来であればLCI時にアップデートされるべきポイントなはずですが、販売ボリュームや価格との兼ね合いで装備されないんでしょうね。一度でも体験すると、夜間走行時の安全性に大きく寄与する機能なので残念です。
F46の最大の特徴である後部ですが、3列目シートを畳むとこんなに広大な荷室が備わっています。普通に使う分には畳みっぱなしになるでしょうから、テールの開口部も大きく広く、かつオートオペレーションも備わっているので、普段からアレコレ積載する方にはとても良い1台かもしれません。トノカバーもしっかり装備されているので、小型ステーションワゴンとして考えるとまぁまぁ良い感じ。
日本ではあまり売れていないけど
個人的にBMWモデルで一番縁遠いモデルだな~と思い今まで見向きもしなかった1台でしたが、乗ってみるとしっかりBMW流儀に沿ったモデルであったこと、他社製MPVとは違い走りの点での妥協が少ないことを鑑みると意外と良作なクルマだったんだと気がつかされた点ではかなり『想定外』でした。
ですがさっぱり売れてない。街でもさっぱり見かけない。その理由はたったひとつ、価格がネックなのでしょう。今回借りた218dxのスタート価格が税込538万円。それにオプションで34.9万円ですから、総額572.9万円。…これ、国産であれば某T車の高級ミニバンの上位グレードに匹敵する価格になってしまいます。一方、競合となるVW ゴルフトゥーランやシトロエン グランドC4スペースツアラーから見ても割高。価格帯で言えば一回り大きいVW シャランと同じ領域に入ります。そう考えると『売れるわけがない』というのが正解なのかもしれません。
もっとも、ミニバンが欲しい!と思ってわざわざBMWを選ぶような人って、ごく少数ですよね(笑)でも乗ってみるとイイクルマだと思いますから、買った人はナイスチョイスをされた方なんでしょう。
コメント
このクルマはこれまで関心を持ったことがありませんでした。どうも「グランツアラー」という名前のわりにカッコが優雅ではない。しかしそこはBMW。中身はちゃんとしているということですね。大変参考になります。
しかしラクシュリーとは言え600万近くもするとは。その金額出すのなら三列シートのミニバンではなく、もっとBMWらしいモデルを選びたくなります。
この記事書いた直後にグランツアラー各グレード一律50万円値下げのニュースがありました。
https://www.webcg.net/articles/-/45128
モデル末期とは言え、こういった措置はかなり珍しいと思います。それでも高い気がしますけど値引きもあるでしょうし実勢価格はいくらぐらいなんでしょうかね。