思い出のCITROEN DS3【後篇】

クルマ全般
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前回はDS3の成り立ちや譜系を紹介しました。今回は我が家で購入したDS3を振り返りながら、同車の良い点・悪い点、今思うことを綴っています。

我が家にやってきたDS3

車名CITROEN DS3 Chic キセノンフルLEDパッケージ
年式2015年式
エンジン1.2L 直列3気筒DOHCエンジン(EB2)
ミッション5速AMT
駆動方式FF
ボディカラーブランパールナクレ×ブルーアンフィニ
タイヤ205/45R17 MICHELIN PILOT EXALTO PE2
オプションなし(標準)

ヨメ氏が購入したDS3は2015年2月に発売された「New Light Signature」と呼ばれるモデル。グレードは下位モデルとなる「Chic」です。

このモデル最大の特徴は、それまでハロゲンだったヘッドライトがキセノンとLEDを組み合わせた新デザインのものに刷新されたこと。C3と共通のハロゲン仕様で特別感に欠けていたものが、時流に合わせてLEDとキセノン光源を用いたものになったことで一気にモダンな印象にチェンジしました。また、このヘッドライト仕様を選択すると、新デザインが採用された17インチアロイホイールが装備されます。

併せてこのモデルから自動ブレーキが搭載されたこともトピック。2016年よりEuroNCAPで歩行者対応自動ブレーキの評価が開始されることによる対策だったのでしょうが、先にオチを言うとその性能は・・・というものでした。

前篇でも触れたパワートレインはごく短い期間に設定されていた1.2L 3気筒エンジンと5速AMTの組み合わせのもの。ちなみに、このNLSが発売されたわずか9ヶ月後には直噴ターボ+6速ATの仕様にチェンジ。試乗車として供されていた期間が短く走行距離も少なかったのですが、かなりのバーゲンプライスで販売されていました。

エクステリア:DS3たる魅力がいっぱい

開放感よりも全体の印象でDS3を選んだ

DS3購入前夜。ヨメ氏は最後までC3とDS3で迷っていました。ゼニスウィンドウの開放感が素晴らしいC3か、スタイリッシュな外見を持つDS3か。数日ジックリと迷い、DS3を購入しました。

決定打となったのはDS3のボディカラー。ブランパールナクレ(パールホワイト)のボディにブルーアンフィニのルーフ・ミラーコンビネーションがとても素敵だったから。通常、ブランパールナクレを選択してもルーフは黒かグレーの選択しか設定がなかったのですが、NLSモデルのみこの組み合わせが用意されていました。

ちなみにこの組み合わせですが、その後のモデルでは廃止されたため非常に希少な組み合わせだったようです(※後に知りました)ブルーアンフィニのルーフカラーはカブリオモデルと限定車(ウルトラマリン)に設定がありましたが、どちらもボディ色はソリッドホワイトのためちょっと違う雰囲気です。

白×紫は遠目で見るとホッキ貝のような見た目(笑)ですが、ルーフのブルーアンフィニは時間帯によって見た時の印象が大きく異なるのが印象的。朝から昼間ははっきりとした紫色が目立ちますが、夕暮れから夜になると落ち着いた黒に近い紫に見えるところも好きです。

新型ヘッドライトは現在にも通ずる意匠

New Light Signatureというモデル名が示すとおり、このモデルからキセノンとLEDのコンビネーションランプが装備されました。外側に配されているキセノン灯と内側に配されたLED光源×3がフロントフェイスをグッと引き締めてくれることで、よりスタイリッシュな印象を抱かせてくれます。ライト上部にはDSモノグラムと呼ばれる文様が配されいるのもポイントでした。LED発光部の意匠はその後登場したDS7でも取り入れられています。

明るさは十分なレベルでしたが、それよりもライトを縁取るアイラインがウィンカーとしても動作する様がとても綺麗。ちなみに本国仕様はシーケンシャル動作をしていたようですが、当時の日本法規ではシーケンシャルが認められておらず、通常点滅でした。コーディングでシーケンシャルにできるはずですが、やり方を知りません(笑

当時、キセノンとLEDのコンビネーションライトなのにヘッドライトウォッシャーが装備されないのはどうしてだろう?と思ったものですが、ECE規格に定める設置要件(ロービームの総目標光束が2,000lmを超える光源を持つ場合に設置)には該当しないヘッドライトであることから装備されていなかったと推測されます。現在はLEDヘッドライトでも装備されていないほうが多くなりました。

インテリア:当時は斬新に思った

素材はチープ感あるけど造形は悪くないです

インテリアは車載インフォテインメント機能が発達した現代からみると凡庸に感じるものの、デビュー当時は斬新なデザインに思いました。造形が凝っていて、メーターやエアコン操作部の意匠は他とは明らかに違う印象を受けます。ダッシュボード表面やドアトリムなどに使用されている素材に高級感はありませんが、ステアリングやシフトノブなどよく触れる箇所の印象はなかなか良く、ライバル達よりも優れていると感じました。

このモデルはインパネトリムが全車ノアール(ピアノブラック)で統一。案の定、指紋や埃が付着しやすいため綺麗な状態をキープするのが大変でした。トリム自体がダッシュボード左右に拡がる形状だったので、見た目の印象はなかなか良いです。初期型や限定車はトリムがオリジナル色で仕上げられているモデルもあるので、コストを惜しまなければそれらをパーツ注文して交換するといった楽しみ方もできたかもしれません。

使い勝手の面ではちょっと微妙な部分も

オーナーズマニュアル画像から拝借

内装に関するマイナスポイントはいくつか存在。

まず、助手席側にあるグローブボックスが驚くほど小さい点は不便のひとこと。膝前の空間を広くするためにダッシュボード下部はかなりえぐられた構造となっており、さらに右ハンドル化による弊害でグローブボックス容量が減らされています。フタ自体は一般的なサイズなのですが、開くと半分の容量しかなく、車検証すら入りません・・・。ヨメ氏曰く『ホントにグローブ(手袋)しか入らない』とひとツッコミ。

もうひとつのマイナスポイントとして、カップホルダーの類が一切設置されていませんでした。ディーラーOPでセンターコンソール部の小物入れにカップホルダーを追加する(というより、トレーみたいなもの)ものがあったので購入しましたが、500mlペットボトルが刺さらない=本当の「カップホルダー」で驚いたものです。フランスでは運転中の飲食が法令で禁止されているから装備されていないという話をディーラーで聞きましたが、その後のPSA車は装備されているという(笑

優しい乗り心地だけど乗り手を選ぶ?シート

シートはホールド感が低めでゆったりと座れるもの。調整幅は適切でドライビングポジションも取りやすいものでした。座面は柔らかめの仕上げでヨメ氏は不満がなかったようですが、体型が大きい私には少し柔らかすぎる印象があり長時間乗ると多少疲れるという点では、乗り手を選ぶのかもしれません。もしかすると私にはスポーツモデルのシートがハマるかもしれません。

この洒落っ気がフランス車なんですか?(良い意味で)

いかにもフランス車らしいなぁと感じさせてくれるのが、エアコンのセンター吹き出し口左側に備わるパルファムエアフレッシュナーです。実態は「エアコン吹き出し口に装着する芳香剤」と一緒なのですが、CITROENオリジナルの香りがとても良かったことを思い出します。香りの強さはカートリッジ差し込み口のダイヤルを回すことで調整できます。

純正部品として用意されていた香りはトロピカルマンゴー・フローラル・パシフィックフレッシュ・バニラの4種類。ただ、交換用カートリッジの寿命が短く、かつ1個2,700円だったため最終的には「本当にうっすら」としか香らせていませんでした(笑

走らせた印象・・・見た目とは裏腹にけっこうハード

1.2L 3気筒ガソリンエンジン×ETG5

パワートレインのお話し。2014年から搭載されている1.2L 直列3気筒エンジン(EB2)は非ターボ仕様。最高出力82ps/5,750rpm・最大トルク118Nm/2,750rpmという額面だけ見るとアンダーパワーかと思うところですが、常用域のトルク特性がフラットなことに加えエンジン重量が軽量なことが効果的に作用し、キビキビと走ることができるものでした。3気筒特有の音振はそれなりに車内へ侵入してきますが、嫌味やチープさを感じるものではなく適度な転がし感をもたらすフィーリングがありました。

組み合わされるミッションも新機構の5速の2ペダルMT(ETG5)を搭載。これまでトルコン式ATやCVTに比べ、2ペダルMTは変速がヘタクソで扱いにくい・・・というのが定説でした。一方、ETG5は変速時のスロットル開度を協調制御してくれるため「機械におまかせ」でも何とかなります。

後期モデルに搭載されているのはAISIN AWTF-80 6速AT。R系・F系MINIにも搭載されていたものです。

ただし、いわゆる「半クラ」や「断続クラッチ」が必要となるシチュエーションでの振る舞いはやはり苦手でした。自走スロープ式の立体駐車場では登坂中に2速シフトアップ→失速して1速に戻る・・・の繰り返しが目立ちます。そういうときは手動変速に切り替えて乗れば全く問題ありません、と言いたいところですが、主ドライバーのヨメ氏はAT限定免許だったため一通りのレクチャーが必要でした。その点から言えば、やっぱりトルコンATには勝てません。

エンジン・ミッションの刷新で旧仕様より90kgも軽く1,090kgになったことで、燃費が大幅に改善されているのも利点。シチュエーションが良ければHEV並の燃費を叩き出す優秀さを持っています。高速巡航レベルであれば20km/L程度は軽く叩き出します。

総じて、絶対的なパワーがなくても十分に楽しめるクルマでした。私が運転するときは手動変速モードに切り替えエンジンを積極的に回して走るのがとても楽しかったことがとても印象に残っています。本当によく出来たパワートレインだと思います。

見た目とは裏腹のハードな乗り味

モダンでエレガントな見た目とは裏腹に、DS3の乗り味はけっこうハードなものでした。DS3に設定されているグレードは「Chic」と「Sport Chic」の2種類。そのうち前者はコンフォータブルなな仕上げなのかと思っていたら、思いの外アシが硬め。ハンドリングもスポーツ寄り。MINIのゴーカートフィーリングほどクイックではなくとも日常+αの速度域の乗り味はシャキッとした印象です。

購入したモデルがSport Chicと同じ17インチ仕様(※標準は16インチ)になっていたことも乗り心地をハードに仕上げる要因。スタッドレスは16インチにしていましたが、そっちのほうが数倍乗りやすい印象を受けました。17インチは少しオーバースペックなのかもしれません。

OEタイヤは205/45R17のMICHELIN PILOT EXALTO PE2が装着されていました。現在はヤングタイマー向けクラシックタイヤとして販売されているようです。タイヤそのものの印象はあまり覚えていません(多分、さほど特徴がなかったのだと思われる・・・)

装備関係:当時はこんなものでした

ショボいインフォテインメント機能(むしろ好都合)

これはディーラーOPのナビ装着モデル内装

前述のとおり、当時のPSA車は本国仕様のインフォテインメントが装備されていません。購入断念したPEUGEOT 208はディスプレイのみ装備された仕様でしたが、DS3はディスプレイすら装備されずモノクロのマルチファンクションディスプレイが装備。ポータブルナビ装着が前提だったので、個人的にはむしろその方が好都合でした。

ちなみに上記写真はディーラーオプションのナビゲーションシステムを装備した状態のもの。本国のインフォテインメントに似た見た目になりますが、中身はPanasonic製ナビ(前述の208向けディーラーOPと基本性能は同じ)が用意されていました。価格は20万円を超えるものの性能はPNDレベル。収まりは良いものの個人的にはNG。

そのため、私はマルチファンクションモニターとエアコン吹き出し口に引っかけるようにインストールする形のスタンド(Brodit ProClip)を用いてパイオニア製地デジ対応楽ナビポータブルを装着していました。見た目はイマイチでしたが、ダッシュボード上に設置するよりも視界の邪魔にならず、操作しやすい位置にインストール出来たのでヨシとしましょう(笑

なお、純正のオーディオヘッドを移設しエアコン操作部を下に移動させ2DINスペースを作り出す社外キットも販売されていたようです。純正ヘッドユニットはMFD操作部も兼ねているので一長一短かも。

守られている感が皆無だった自動ブレーキ機能

New Light Signatureモデルから新たに搭載されたのが自動ブレーキ(アクティブシティブレーキ)でした。ですが現代のADASと比較すると全く役に立たない性能しか有していません。作動スピード範囲は5~30km/hしか対応しておらず、歩行者検知機能もなし。夜間は使えません。

結局、所有していた期間にこの装備が効果を発揮する場面は一切ありませんでした。あまりに警告を発さないので本当に動いていたのかすら疑うぐらいでした・・・(笑)これなら・・・わざわざいらないかも・・・。

クセがあればあるほど好きになる1台

思っていたよりハードな乗り味だったことで、購入直後は「C3のほうが良かったかな?」と思うことが何度かありましたが、ヨメ氏も私も乗れば乗るほどDS3の魅力にハマっていきます。Bセグ車の中では他に代えがたいオシャレさを持っていたことも、こだわりが強いヨメ氏にバッチリとハマった選択肢だったようです。

色々なことを気づかせてくれたDS3は、その後の私自身のクルマ選びにも大きな影響をもたらしました。2016年当時に所有していたR60 MINI CROSSOVERを売却し、F56 JCW MTに乗り換えたのも『クルマは小さく軽く、アジリティに富んでいて、エンジンをぶん回して楽しく乗るに越したことはない!』と強く思えたからです。

結局、1年でお別れしてしまった・・・

足りない部分もありつつ、それを上回る魅力も持っていたDS3は長く乗りたいと思える1台でしたが、結局1年で売却してしまいました。購入から10ヶ月、第1子を授かったことで3ドアハッチバック車2台体制はさすがに制約が多いと思ったため、F56よりも先に購入したDS3を売却しVW Passat ALLTRACKに乗り換えました。

今となって思えば、DS3ではなくF56を売却すれば良かったなぁと後悔。F56 JCWはとても良く出来たクルマだったのは間違いないのですが、それを上回るDS3の「独特な雰囲気」は未だに深く記憶に刻まれています。

あれから6年経った2023年に中古車情報サイトを眺めてみました。当時もかなりバーゲンプライスだったETG5搭載のDS3はさらに価格が落ちており、少しの財力と駐車スペースさえあれば・・・と思えるレベルに。さすがにこれ以上の増車は無理ですが、いつか再び所有してみたいと切に思います。

コメント

  1. HOPE より:

    DS3。いいですね。
    過去検討したことがあるクルマなので、今見ても欲しくなります。
    ウルトラマリンが欲しかったのでイメージが似ています。

    3ドアのMT車なのにそこまでスポーツ色がなく、速く走らなくても良さそうなのがグッドです。
    一回いつものお店にレアなレーシングが入ってきてじっくり見たことがあります。すぐ売れちゃいましたが。
    その一回だけですね、実車をちゃんと見たのは。

    結局は縁がありませんでしたが。

    • アバター画像 Hokkai_K2O より:

      狙ってる方向はMINIと同じはずなんですが、異なる世界観を持っていたクルマでした。
      仰るとおり速そうには見えないのに速いところがいいですよね。
      7月現在、DS STORE札幌に最強モデルPerformanceの中古車が並んでいるのが妙に気になっています・・・。

      DS3は絶対的な台数が少ないので街で見かける機会がほとんどありませんが、未だに見かけるたび目で追ってしまいます(ヨメ氏もそうらしいです 笑)

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