社用車1号F60のタイヤを新調しました。前回記事のとおり、チョイスしたのは2025年に発売されたばかりのMICHELIN PRIMACY 5です。新型発表直後の3月にオーダーを済ませ、4月末に装着予定でしたが、業務多忙とRrスプリング折れ修理が重なったため、結局7月上旬までお預けとなりました。
待ちに待った新タイヤの話、その前に…今回PRIMACY 5を選ぶ根拠になった旧モデルPRIMACY 4について触れておこうと思います。
MICHELIN PRIMACY 4を振り返る

当サイトで散々引き合いに出すMICHELIN PRIMACY 4は個人的タイヤのベンチマーク的存在。トータルバランスが優れており、どんな車両にもマッチする万能さがあると考えます。社用車F60を皮切りに、オーリスとアコードワゴンの3台に装着してみましたが、それぞれのモデルが持つ本来の走り味をうまく引き立ててくれる懐の深さ、タイヤの完成度の高さを物語っていると思います。

特に注目しているのが、電動式パワーステアリング(EPS)とのマッチングです。
それまで主流だった油圧パワーステアリング(HPS)は自然な操舵力や反力を持ち、路面状況を掴みやすいというメリットがあった一方、複雑な機構でメンテナンスが必須、さらに部品点数も多く高コストなことやエンジンパワーで稼働することで燃費性能に影響するといったデメリットを持っています。

それに取って変わったのがEPSです。部品点数が減り低コストな上、燃費性能に影響を与えないというメリットに加え、最近ではADASデバイスによる車両制御を実現するためには電子的にモーターを制御する必要があるため一気に普及率が高まりました。現在市販されている乗用車はほぼすべてがEPSを採用、HPSはごくごく一部のモデルのみに限られています。
ただ、EPSの操舵感は不自然と評されることが多く、路面状況を掴みづらいものや、反力が妙に強い・弱いなど、ハンドリング性能に悪影響を及ぼした例もありました。最近ではアシストセッティングの改良によりかつてのHPSに劣らないフィーリングを持つモデルも増えてきています。

その点、MICHELINは公にしていませんが、同社製タイヤはEPSとの相性を高める設計と言われています。
具体的には接地面の最適化で操舵時のレスポンスを滑らかにする、サイドウォール剛性を最適化して過敏な反応を緩和、コンパウンド設計の工夫で中立付近のステアリングフィールを曖昧にならないようにするといった設計が施されているとのこと。これにより、EPSの悪癖をタイヤがカバーし車両全体の印象を向上させようというのが狙いです。
タイヤの真円度が非常に高いのも特徴で、走行中のノイズや微細な振動も減少するのも良いポイント。これは他のメーカーのタイヤも改良をしてきていますが、一歩上の印象です。グリップ感はコンフォートタイヤらしいレベルですが、日本の道路事情では十分以上の性能を有しています。
スポーツタイヤのような応答性の鋭さを求めるユーザーにはやや穏やかに映るかもしれませんが、落ち着いたハンドリングと乗り心地を重視するのであれば、安心して選べる選択肢でした。
その良さはステアリングフィールが軽すぎて反応がちょっと過敏だったオーリスでは適度な落ち着きと安定感をもたらし、重めのハンドリング性能を持つアコードは適度な操舵感とスタビリティの両立ができました。ワンランク上のクルマに乗り換えたような印象さえ覚えるものです。

一方、デメリットは耐摩耗性と経年劣化の面であと一歩が欲しいところ。F60 SEの場合、中古品で購入時が6mm弱の残溝が、16,000km走行で約3mmという結果。MICHELINの売り文句では4mmを下回ってもウェットグリップ低下を抑えているとのことでしたが、残念ながらあまりそう思えませんでした。価格が高めのタイヤですから、もう少し長持ちであって欲しいのが本音でした。
MICHELIN PRIMACY 5

結局、履き替え時は最良のタイヤではあるものの…長持ちぶりが少し思惑から遠かったため、最近は1本あたりの調達価格が激安なアジアンタイヤを購入していました。Hankook・KUMHO共にPRIMACY 4には劣るものの、明らかに粗悪な性能ではなく十分以上の性能を有していたことから『まぁ、これでいいか』と思っていました。
そんな中、MICHELINよりPRIMACY 5が発表。途中、コンパウンドが改良されたマイナーチェンジ版のPRIMACY 4+が発売されていましたが、今回は完全に新設計。今回のモデルは耐摩耗性の向上を強調していたこともあり、それならば再び試してみようと思い切って購入しました。
見た目はこんな感じ

まずは生産地と製造年月から。発表直後なので在庫品を掴まされることはなく(笑)2025年4週=1月後半製造のタイ製でした。今回は海外で流通されているモノもヨーロッパ製ではなくタイ製が話ですが、以前のようなアジア向けST仕様は用意されていないのかな…?

EUタイヤラベルは以前記事のとおりB/A/B。日本ラベリングはAA/aとなっておりほぼ同等のスコアです。また、UTQGはTREADWEAR 420/TRANCTION A/TEMPERTURE Aでした。ちなみに以前装着していたPRIMACY 4が340でしたから、売り文句どおり耐久性は向上していると考えて良さそうです。

PILOT SPORT系から採用され始めたプレミアムタッチがPRIMACY 5でも採用されています。ただし前者がタイヤサイドウォール全体に施されていたのに対し、こちらはMICHELINロゴの部分のみ。フルリングのほうがカッコイイですが、まぁ…差別化ですね(これでもカッコイイです 笑)

まじまじとタイヤトレッドを眺めていたら、これまでのMICHELINタイヤでは見かけなかったインジケーター穴が。なんだコレ?と調べてみると『Wear 2 Check』と呼ばれる新しいスリップサインでした。摩耗状態に応じて浅い穴から無くなるという仕組み。でもコレ、Ventus V12 evo2にもついていたな…(笑)その原理と狙いはどちらも大体一緒でしょう。
さすがはPRIMACY最新版!

取引先(当社から200km離れています 笑)で交換作業を終え、慣らし運転ながら帰路につきます。交換後慣らしが終わっていない段階で率直に思ったのが、
- 今まで経験したことのないレベルでもの凄く静か
- コーナリングパワー立ち上がりのスムーズさはPRIMACY 4より更に進化
- とても綺麗に転がっている
という3点でした。まず静粛性の点では、街乗りの速度域に於けるノイズボリュームはとても抑え込まれており、とにかく静かだなぁというものです。舗装路面の材質や状態によりますが、新しい路面であればほとんどタイヤの音を意識しないレベル。
高速道路に於いては、路面の粒子が大きい北海道型SMA路面(一般的な透水性高機能舗装よりはザラザラとした感じ)では走行音が目立ってしまいますが、そうでなければ本当に静か。この静けさは今まで経験したことのないレベルです。
ちなみに、先日代車でお借りしたU25 COUNTRYMAN S ALL4に装着されていたContinental EcoContact 6Qに比べてもこちらのほうが圧倒的に静か。アコードに装着しているECSTA PS71とは・・・やめておきましょう(笑

微少な操舵に対するCP立ち上がりのスムーズさは素晴らしいのひと言。F60のハンドリングはMINIファミリーらしくゴーカートフィーリングが意識されており、操舵に対する反応は比較的早いのですが、このタイヤを履くことでその立ち上がりがスムーズかつリニアに変化します。長距離移動が多い私にとってはこの特性のほうが疲れにくく、安心して運転ができます。
一方、CP立ち上がりがハッキリとしている特性が好みであれば、このタイヤの感想は『何だか柔いなぁ』というものになるかと思います。フニャフニャで腰のない印象はありませんが、ステアリング操作に対するレスポンスは少しナマされていますので、PILOT系統のほうがオススメ。
綺麗に転がっている感ははっきりと実感できるレベル。とにかくノイズや振動なく転がっている様子が容易にわかります。ただ、驚くのが路面ギャップに対する反応で、確かにソフトな反応を示しつつ、グニャッとなってフラフラするという気持ち悪い挙動を示さず、何ごともなく済ませるという印象があり、これも高評価です。
過去の経験上、MICHELINタイヤはある程度走行してようやく本領発揮するため、現時点ではグリップ感やウェット性能は未知数。もう少し走り込んでみてから印象を確かめてみようと思います。それでも、初期状態の印象ですらこれだけ良いのですから、走り込むにつけ印象が悪化することはまずないでしょう(笑)
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