既に社用車を購入した後ですが…以前から『評判を聞いて』気になり続けているクルマがあります。それが2019年にデビューしたマツダ3です。個人的にはあまり馴染みのない(所有しようと思ったことがあまりない)メーカーなのですが、現行MAZDA2(デミオ)ディーゼル車はレンタカーで気まぐれに指名借りしてみたりで、その都度『うんまぁそれなりにイイクルマよね!』と思ったりしています。
で、MAZDA3。以前はアクセラという名前でしたが、名前と一緒にイメージも刷新。特にファストバックのほうは遠目で見ても「3だ!」とわかるスタイルになりました。レンタカーに供されているのは、セダンのほうです。
車名:マツダ MAZDA3 15C
年式:2021年式?
エンジン:1.5L 直列4気筒DOHC直噴エンジン(SKYACTIV-G 1.5)
駆動方式:AWD
ボディカラー:ソニックシルバーメタリック
主なオプション:ダークティンテッドガラス、CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー
タイヤ:ブリヂストン ブリザックVRX
恐るべし、法人グレード
実はこの個体、一般向けカタログには掲載のない仕様になります。調べてみると「15C」と呼ばれるグレードで、主に法人向けグレードとして設定されているもの。当然、ウェブサイトにも記載がありません。「法人向け」というよりかはレンタカーやカーシェアリング向けグレードと言っても良いのかもしれません。で、今回はいきなり装備の話からし始めますが…この法人グレードの装備がすごいのです。
一番近いグレードは同じくマニュアルエアコン+非アドバンスキー仕様となる「15S」になるかと思いますが、目に見えてわかる差異としては、ホイールがアルミからスチール+キャップに変更されている点、ステアリングホイールとシフトノブがウレタン仕様になっている点ぐらいしか差異が感じられません。(カタログと装備表が一般公開されていないので、詳細は未確認)
で、それ以外の部分。例えばヘッドライトは(アダプティブじゃない)LED式だし、アクティブドライビングディスプレイ(HUD)やセンターディスプレイ、液晶ディスプレイ式スピードメーターが装備。一般的な法人向け廉価仕様では(まるで罰ゲームかのように)真っ先にオミットされそうなハーモニック・アコースティックス+8スピーカー、果てには某B社では有料OPだったりするApple CarPlayといった装備がそのまま標準装備となっている部分に、マツダのとんでもない本気を感じます(笑)これを社用車で買ってもらえる人は幸せものですね。
で、装備が充実しているだけなら驚かないのですが、この内容で車体本体価格が201万円(FF仕様)という事実!これは流石にバーゲンプライス。積極的に売らない裏グレードなだけあります。ちなみに一般向けの最安グレードである15SのFF仕様は222万円。ちょっとどういう計算してんだ、というツッコミを入れたくなります 笑
エンジン・パワートレイン
コレに乗るまであまり知らなかったのですが、販売開始当初はファストバックのみ1.5Lガソリンエンジン搭載グレードの設定がされていたようで、セダンの一般向けグレードは1.8Lディーゼルか2Lガソリン、あとは夢の技術が実用化されたと噂のSPCCIエンジン(SKYACTIV-X)しかなかったようですが、2020年5月にガソリン1.5Lモデルが追加されたとのこと。
遅すぎず、速すぎず…
で、このP5-VPSエンジンですが、最高出力が111ps/6,000rpm、最大トルクが146Nm/3,500rpmというスペック。同じものがMAZDA2にも搭載されています。エンジンのフィーリング自体は決して悪くないのですが、さすがに1,300kg超の車体を引っ張るエンジンとしてはいささかパワー不足で、大人3名(しかも比較的デブ3人 笑)乗車での高速道路走行では気合入れてアクセルを踏み込むしかありません。おかげでエンジンの回転数は高めで推移することになります。
やっぱりこの車格には1.8Lディーゼルぐらいのパワー・トルクは欲しいところかと。MAZDA2に乗っかっている分には印良いパワートレインなんですけどね。。。
もっとも、市街地走行でのパワー感・トルク感は必要十分ですし、マツダ自社製6速ATのフィーリングも適度なダイレクト感が小気味よく、圧倒的にダメだと思うほどではありません。最近はAT多段化が一般的になり7速・8速が当たり前になってきていますが、6速だからといって不足があるようには思えません。個人的には、6速MT車も用意されているのでそちらを試してみたいところ。
踏まなきゃ燃費は良好です
気になる燃費性能ですが、いつもの高速道路と山岳路中心のルートで14〜17km/L程度で推移。まずまずと言ったところでしょうか。
足回り・ハンドリング
明確に優れている点を挙げるとすると、このクルマ、とてもまっすぐ走ります。
というと「え?」と思われるかもしれませんが、直進安定性が高いというより、ステアリングに対する
クルマの追従性が高く感じます。高速道路のようなずーっと直線路にてステアリングをチョロチョロと動かさない限り、しっかりとまっすぐ走ります。で、峠道のようなワインディング路においては、ステアリングを切り込む感覚とクルマの動きがほぼ一致します。そのことから、乗っていて不快に感じる部分がほとんどないのです。
前評判ほど悪くなかった乗り心地
その上で乗り心地の面ですが、スタッドレスタイヤを装着していることを差し引いたとしても、良好な部類にいると思います。いろいろとウォッチングしていると、年次改良が入る前のMAZDA3の足回りは落ち着かない動きが目立つと評した意見がぼちぼち見受けられましたが、年次改良で良くなったという意見も。少なくとも、今回借りている個体では明確に不満に感じるものがありません。ただし、205/60R16を履くグレードがこの15Cと15Sというボトムグレードのみになり、それ以上のグレードは215/45R18となるので、上位グレードだとまた雰囲気が違うかもしれません。
ブレーキのフィーリングは相当レベル高し!
もうひとつ、これも前評判を聞いて乗ってみて「おお、すごい!」と思った部分ですが、ブレーキフィーリングがとても好みです。この解説にもあるとおり、フィーリングは重点的に磨き込まれたとあります。同じようなフィーリングを感じる車両として、以前我が家にいたVW Passatも似たようなフィーリングでした。
MAZDA3のそれは、踏み始めのタッチではあまり減速Gが立ち上がってきません。で、その状態でスッと踏み込むとペダルの剛性がグッと立ち上がり、そこからは踏力によりリニアな制動Gが立ち上がる感じ。Passatも最初はブレーキが効かない感じで「オッ!?」となりますが、そこから先は強い制動Gが欲しいなら踏力を上げて踏み込めば良いというモノでした。ただし制動Gの微調整が可能という点では、このMAZDA3のフィーリングはなかなか良いと思います。
ちなみに我が家のX2はその微妙な調整があまり得意ではなく、その点は好きではありません。もう1台のCOOPER SEのほうは回生ブレーキが機能するのでまた違ったフィーリングですが、残念ながらどちらも感心するデキではありません。
外観・インテリア・荷室
乗ってみて、というか目の前にしてみて初めて気がついたのですが、ファストバックとセダンのデザインがかなり異なる点。顔つきだけかと思ったら、フェンダーやサイドドアまで異なるのは驚き。ここまで作り分けされているのはちょっと珍しいですね。ファストバックに比べ、セダンは伸びやかな印象があり、サイズ感も相まってCセグメントセダン以上の存在感があります。ボディカラーにもよるでしょうが、マツダご自慢のソウルレッドやマシーングレーであれば、とても雰囲気が良さそう。
長時間まともに座り続けられるシート
以前からマツダ車で感心なのが、シートの着座姿勢がとてもまともに作り込まれている点です。このMAZDA3でもその利点がしっかりと活かされており、骨盤を立てて座る姿勢にしっかりとハマるシートのデキ+ちょうど良い位置に設定できるステアリングホイールと、これまた座ったときに丁度良い位置に配置されているABCペダルという美点はこのモデルでもしっかりと存在します。競合のスバル・インプレッサではこの点の良さが少し薄れる(特にペダル位置と角度)ので、一気に長距離を走る私にはこの微妙な差がとても重要なのです。
トランク容量も良い感じ
セダンならではのチェックポイントですが、トランクはこんな感じ。容量的には問題ありません。トランク上部に後席シート背もたれを倒すレバーが設置されているのは良心的。開口部も広めですし、使い勝手は良さそうに思います。
最廉価モデルであっても雰囲気の良いインテリア
インテリアですが、最廉価グレードの割に安っぽさがありません。ご丁寧にソフトパッドもあります。造形自体に雰囲気の良さがあって、とても200万円のクルマとは思えません。あまりクルマに詳しくない同乗者も「まるでBMWみたい!」との評。決して間違ってはいないかと。スイッチ類の配置・操作性もよく練られており、インテリアへのこだわりが強いマツダならではの良さが存分に感じられます。
メーターは中央部に7インチの液晶が備わっていますが、ヨーロッパのライバルはフル液晶というのも当たり前になってきた今としては、ちょっとだけ寂しい感じ。表示できる情報も限られており、存在感はあまり強くありません。演出という点では、もうちょっとわかりやす~い何かがあってもいいのかなぁと思うところです。
新世代マツダコネクト
マツダコネクト。未だにタッチスクリーンではないのですが、曰くあえてこうしているとのこと。操作性はiDriveとほぼ変わらずのダイヤル+ショートカットキー式。旧モデルとの違いとして、以前のものより画面が大型化されており、UIもモダンになりました。カーナビは別売のナビゲーション用SDカードアドバンスを購入すると利用可能になりますが、地図の見た目はちょっと古め。以前と同じトヨタマップマスターが採用されているんでしょうね。なお、15Cには装備されていませんが、上位モデルには車載通信機によるコネクティッド機能が搭載されているようです。
で、Apple CarPlayのほう。残念ながらワイヤレス接続は出来ずUSB接続が必須となるようです。我が家の2台と違い、右ハンドル仕様の画面になっています。前述のとおりタッチパネルが非搭載のため、操作はコントローラーを使うことになります。
ちなみにAndroid Autoも使用可能です。こちらもUSB接続が必須になります。
標準オーディオのクオリティが良い感じ!
あと、もうひとつ触れておきたいのが標準のオーディオシステム。前述したとおりですが、当初は法人向けグレードなので「何の罰ゲーム?」と言いたくなるようなフロント2スピーカー仕様だろうなんて思っていたんですが…しっかり8スピーカーが搭載されているではありませんか。システムはPioneer製のものが搭載されています。
で、もうそれだけで指名借りしたくなる1台なんですが、標準状態の音質的にはちょっと物足りない印象があります。ボリュームを上げずに聞く分は良いのですが、ある程度ボリュームを上げると低音域が物足りず、中音~高音域の間ぐらいが目立ちすぎてちょっと聞き疲れる印象。ですが、音自体は悪くありません。イコライザ弄ればいいのか?と思い調べてみると、オーディオレビュー記事に記載があったイコライザの設定を試してみたところ…これがそれなりにいいのです。標準状態でコレなら、文句ないでしょう。(そうなると、オプションのBOSEシステムが余計気になりますが 笑)
安全性
まだJNCAPのスコアが発表されていませんが、EuroNCAPのスコアは公開されています。2019年テストの中では比較的上位のスコアで、衝突安全性能どちらも優れた評価となっています。
ちょっと驚くACC稼働可能速度域
最廉価モデルですが、基本の安全デバイスは全盛り。自動ブレーキ、全車速対応ACC、ブラインドスポットモニター、車線逸脱警報、フロント・リアソナーがしっかり装備されています。渋滞追従機能と車線中央維持装置は上位グレードをチョイスしないと装備されないのはうんまぁ仕方ない…レベルですが、これだけあれば十分です。そもそも、前述のとおりステアリングの追従性が高いので、ふらふらと走る場面が少なくレーンキープに世話になることがほとんどありませんから。
あと、これは以前デミオ(MAZDA2)に乗ったときにも思ったことですが、アクティブドライビングディスプレイが標準装備されている点も安全性という点では素晴らしいと思います。ACC作動状況やBSMの情報が表示されますから、安全に関する情報の得やすさという点でも安全性が高い言えるでしょう。
ついでに、ですが…ACCで設定できる速度域が日本の法定速度上限どころかとんでもない速度まで設定可能になっています。まぁ、当然そんな速度で設定することはないんですが…ちょっとびっくり。
総論:マツダの本気を見た
それにしても…この装備内容でこの完成度のクルマが201万円というプライス、改めて衝撃的です。個人販売してくれるのかはわかりませんが、値段と内容から言えばイイクルマ!と言っても良い気がします。わかりやすいチープポイントのテッチンホイールを除けば、安物に乗せられている感、さっぱりありませんから。
ちなみに、同セグメントのスバル・インプレッサG4と比較すると、車体サイズやエンジンスペック、それに価格も200万円前後とほぼ横並び。向こうはヘッドライトがハロゲン標準でカーナビはオプション、カーナビはオプションでオーディオも4スピーカーという内容ですが、それよりも装備が優れていてこのお値段。同クラス内でエンジン1.8Lで価格が優位のトヨタ・カローラにも負けていません。
ただ、私の乗り方で言うと流石にこの車体に1.5Lエンジンはしょんぼりする結果でしたので、そうなるとディーゼルか噂のSPCCIエンジン搭載グレードが選択肢になるわけですが、一気に70~120万円ほどお値段アップ。うーん。そう思うとなんだか微妙だぞ(笑)
なんだか、この最廉価グレードの魅力を存分に感じちゃうといろいろ考えちゃいますね。って、自分で買うわけじゃないのに。
コメント
クルマは最廉価版を買え、とは評論家の福野某氏がよく言っているセリフですが。そうですか、これが200万円なら確かに驚きです。
シート、ブレーキ、インテリア、本来この価格帯ならあまり期待はしないのですが”良い”とのこと。現在のマツダ車は私も常日頃気にはなっています。購入候補ではないのですが、頭の片隅に引っかかるというか。
まぁ今回は法人グレードということでちょっと特別なのかもしれませんが。それでもやはりあなどれませんね。
ホンダ・シビックやスバル・インプレッサもそうなんですが、現代のCセグセダンはかつての(2000年代前半)Dセグメント車と同じようなボディサイズへグレードアップしているんですよね。そしてアコードもレガシィも200万円前半で買えるグレードがありました。マツダも初代アテンザがやはりサイズと価格帯がマツダ3とほぼ同じです。
それらからの乗り換えを考えたときに、現在のDセグは高すぎてNGになりそうですから1つ下の車格モデルに当時のDセグボトムの価格帯の車両を用意しておくのかもしれませんね。