前篇からの続き。5年前に購入したF39を乗り換えたい願望が沸かないため、必要なメンテナンスを行いながら今後も乗り続けようと思っていた矢先、とある事情で多人数乗車が可能なクルマ購入が必要になりました。今回は乗り換え候補車の選定と実車チェックのあれこれです。
条件(とヨメ氏の好み)に合わせたクルマ選び
F39 X2はもともと夫婦共用車として購入しましたが、その後R52増車・起業に伴う社用車購入を経て私がほとんど乗らなくなったため、現在はヨメ氏の通勤・業務車+週末の買い物車にポジションチェンジ。今後もヨメ氏がメインオーナーとなるため、今回の車種選定はヨメ氏の好みで選んでもらうことにしました。
夫婦共用車のときは毎日片道10kmの通勤距離を走っていましたが、現在はヨメ氏の勤務先が変わり片道3kmの走行に大幅減。この距離であれば自転車通勤も可能ですが、冬場はそうもいかない+業務で私用車利用があるため、クルマが手放せません。この状況は典型的な『チョイ乗り』ですから、クルマにはあまり良い環境ではありません。
そんな現状や制約事項をまとめると、次期車は以下の条件をクリアするものが望ましいと言えます。
- 5人以上乗車可能、かつチャイルドシート2座搭載が可能=3列シート車
- ただし国産ミニバンはNG(ヨメ氏が毛嫌い・・・笑)
- 短距離移動が多いのでガソリンエンジン搭載車がベター
- 予算は200~300万円で収まるもの
なかなかシビアな条件です。定石はHEV仕様の国産ミニバンでしょうけど、ヨメ氏曰く『国産ミニバンに乗るぐらいならクルマなし生活したほうがマシ』という志向の持ち主のため基本NG。実は私よりも偏屈者かもしれない(・・・どっちもどっちか 笑
後部座席が独立3座のモデル
候補選定を進めていくうち、多人数乗車が可能な車種の中には後部座席が独立3座仕様となっているモデルが複数存在することを知ります。中には3座すべてにISOFIX取付金具が装備されているモデルもあります。それを選べば3列シート車じゃなくても大丈夫な可能性も。
その結果、最終候補に残ったのは以下のモデルです。
- Volkswagen Sharan
- Volkswagen Golf Touran
- Audi Q7
- VOLVO XC90
- PEUGEOT 5008
- PEUGEOT RIFTER/CITROËN BERLINGO
- CITROËN C4 Picasso/GRAND C4 Picasso(と改名版のSPACETOURER)
- CITROËN C5 AIRCROSS
- Renault Kangoo
こうしてみると、輸入MPVの多くは後部座席(2列目)が独立3座仕様となっているモデルが多数派でした。国産ミニバンの場合、独立3座仕様は過去にホンダ・エディックスなどがありましたが現在は存在せず、人気モデルは2・2・2座の定員6名仕様をメインに据えるが多いようです。仮に2列目に3名乗車が可能なベンチシート仕様であっても、中央席は狭め。根本的な考え方が違うようです。
そして選択肢の多くはフランス勢なのもお国柄なんでしょうか?SUV系も何台かありました。
選択肢を吟味してみる
VW Sharan/Touran
まずはVolkswagenの2車種から。2010年から2022年まで販売されていたSharanは内外装やパワートレインが時代遅れな感じがしますが、発売当時は高評価を得た1.4LツインチャージャーTSIエンジンと6速DSGを組み合わせたパワートレインを搭載しています。モデルライフ後半には2.0L TDIエンジン(ディーゼル仕様)が追加導入されています。走行性能に関してはなかなか評判のようで、ベースとなったB7パサート同様、高速域でもビシッとまっすぐ走る基本性能の良さはドイツ車ならでは。根強い人気があるようで、高年式のディーゼル仕様の中古車相場はかなり堅調。
一方のTouranはGolf VIIをベースにしたMPVモデル。2016年にデビューし、現在も新車購入が可能です。日本ではGolfの兄弟車を名乗るだけあり見た目は非常に似た印象をを持っていますが、こちらも登場からかなり年数が経過しており少し古くさく見えてしまいます。パワートレインもGolfに搭載されるものと同じものが搭載されており、現行型は1.5L TSIエンジンと2.0L TDIエンジンの2種類を設定しています。
どちらも長い年月に渡って販売されているため、購入年式によって装備内容がけっこう異なります。特にSharanに関しては12年という超ロングライフでしたから、見た目が一緒だからと低年式を狙うのはちょっと考えたほうが良さそう。初期型と最終型では主に安全デバイスに大きな差があります。
PEUGEOT RIFTER/CITROËN BERLINGO/Renault Kangoo
次の選択肢は欧州LCVの3台。今回の条件に近いのはこれらのモデルでしょう。2023年に3代目に刷新されたKangoo、先日フェイスリフト版が発表されたばかりのRIFTERが注目モデルになるでしょうか、どれも新車価格はそれなりのため、狙うとすれば高年式中古車がメインになるでしょう。
各社、車体形状や内外装の設えはファミリー向けに仕上げられており子供が喜ぶであろうギミックも多いのが特徴。クルマの構造的には国産の5ナンバーミニバンに近いかもしれません。
VOLVO XC90/Audi Q7
輸入大型SUVの中には3列シート仕様+2列目が(ほぼ)独立3座となっているものがあります。代表例としてはAudi Q7は2列目中央席にISOFIX金具が装備、XC90は2列目中央席の座面が持ち上がりそのまま子供が乗れるインテグレーテッドチャイルドシートが標準装備されています。
ただ、中古でも価格がね・・・。さすがにちょっとココまでは手が出ません。あとはサイズ感。ヨメ氏がこれを乗り回すのは色々な意味でちょっと抵抗あるかも。
CITROËN GRAND C4 Picasso(SPACETOURER)
お次はコレ。2013年から2022年まで販売されていたCITROËN C4 Picasso/SPACETOURERです。デビュー当初は先代モデルに引き続き『C4 Picasso』を名乗っていましたが、モデルライフ途中に権利関係の都合でSPACETOURERに改称されました。2つのボディバリエーションがあり、ショート版は2列、ロング版は3列シートを装備しています。
ショート版・ロング版どちらも後部座席が独立3座となっているのも特徴で、それならショート版も選択肢に含めたいところですが、ロング版より先(2019年)に国内販売が終了している上、いささか荷室が狭く感じたため、今回はロング版を選択します。パワートレインはガソリン・ディーゼルの2種から選択可能ですが、高年式車両は大多数がディーゼル仕様です。
PEUGEOT 5008/CITROËN C5 AIRCROSS
最後はSUVモデルの2台から。GRAND C4 SPACETOURERと同じEMP2プラットフォームを採用するPEUGEOT 5008とCITROËN C5 AIRCROSSです。PEUGEOT 5008は3列シートを備えSUVとMPVを掛け合わせたクロスオーバーモデル、C5 AIRCROSSは2列シートながら後部座席は独立3座を備えたモデルです。ちなみにEMP2を採用するモデルにPEUGEOT 3008がありますが、こちらは後部座席が独立3座ではないため除外しています。
全長や全幅、ホイールベースなどの全体的なサイズ感は近似値で主要装備もほぼ同じものが採用されていますが、内外装の仕立ては全くといっていいほど別モノです。5008は3008譲りのスポーティー性やパーソナリティ性を重視しているのに対し、C5はファミリー向けにフレンドリー感が溢れる仕立て。パワートレインは完全に同じものが採用されていますが、足回りを始めとした乗り味については、5008がスポーティ、C5がコンフォートに振っているのが特徴です。
5008については新型が本国でデビュー済み、C5 AIRCROSSも2025年には新型に切り替わることがアナウンスされています。どちらも時代の流れに沿ってバッテリー搭載モデルが主流になります。どちらも2024年現在は末期モデルが新車販売されていますが、予算感で言えばフェイスリフト前の中古車が現実的な選択肢でしょう。
ドイツ製MPVは他にもあるが・・・
輸入車で多人数乗車可能モデルとしては、Mercedes-Benz GLBクラスとBMW 2シリーズActive Tourerが存在します。どちらも3列シートを装備していますが、2列目シートが独立3座仕様ではないため今回は除外しました。
本命はコレです
これらの選択肢を提示した上で、まずはヨメ氏フィルターにかけます。
まず最初に落選したのが、VWの2台。以前所有していたVW Passat ALLTRACKは結構気に入っていたようですが、MPVの2台に対しては『あまり興味が湧かない』という感想。それに加えて次期車はドイツ以外にしたいとの意向だったので実車を見ることなく選外に。
次にRIFTER/BERLINGO/Kangooについては、やはり以前試乗した際に感じた背高感や商用ベースであるが故に魅力度が薄いという理由でこちらも今回は選外。どちらも良いクルマであることは間違いないのですが、性能だけで買うわけじゃないですもんね・・・。
残った選択肢はPEUGEOTとCITROËNのモデルたち。このうち、私の本命はCITROËN GRAND C4 SPACETOURERです。と、いうより最初から大本命。走行性能は各メディアの評判がとても高く、その上、凡庸になりがちなMPVとは一線を画す内外装や最新モデルに引けを取らない安全デバイスの装備充実とあれこれ見所の多いモデルです。
ミニバン嫌いの私ですら以前から『もしどーしてもミニバンに乗ることになったら、躊躇なくこれを選ぼう』と心に決めていた1台。残念ながらロング版も既に生産が終了しており、中古車しかありません。国産ミニバンが強い日本国内ではあまり売れなかったため、分母数がかなり少ないのが難点です。その反面、不人気が故に装備が充実した高年式個体であっても200万円前半のバーゲンプライスで購入できるのもまた魅力。
と、いうことで・・・決定権を持つヨメ氏を誘って(=その気にさせるため)地元CITROËNディーラーに1台だけ販売されていたGRAND C4 SPACETOURERをチェックしに行きます。
さっそく実車をチェック!
到着早々、実車をチェックします。2013年のデビュー当時は奇抜に思えたフロントフェイスも後にCITROËN各モデルに拡大採用され馴染んだのか、すんなりと受け入れられるスタイルになりました。欧州製MPVらしい流線的なフォルムを持っており、国産ミニバンのような顔面ギラつきとは無縁のスタイルはとても好みです。
室内も念入りに設計されています。たっぷりとしたサイズで座り心地の良いシート、良好な操作性を持つインストルメント、ダッシュボード中央に位置する巨大デジタルセンターメーターなど、どれもが2024年現在でも十分通用する仕上がり。それに加え、運転席からの視界開放感が素晴らしいゼニスウィンドウや巨大なパノラミックガラスルーフなど、移動を楽しい雰囲気で盛り立ててくれる装備が満載なところにポジティブな印象を受けます。
後ろから見た姿はいかにもミニバン的フォルムですが、大きく開くテールゲートや凝った形状と造りのテールライト、サイドウィンドウを囲むように配置されたシルバーモールなど、凡庸になりがちなスタイルにアクセントを添えています。
ディーラーにあった展示車両のボディカラーは白。聞けば新車販売のほとんどは白か黒のボディカラーで、有彩色はかなり少数とのこと。我々の希望は『どうせ乗るなら有彩色!』ということで、別拠点にあったラズーリブルーのガソリン仕様最終モデルを取り寄せて購入する算段で商談を進めます。F39の下取り査定も済ませ、条件を詰めて『もうコレしかないな!』と契約一歩前まで進みましたが、どうもヨメ氏の顔色が怪しいのです。
『やっぱり、コレじゃない・・・』
まさか、と思い意思確認してみると・・・
やっぱり、コレじゃない・・・
聞けば、内装の雰囲気や装備内容、超お買い得な価格は文句の付けようがないものだったようなのですが、凝ったデザインであってもやっぱりフォルムはMPV車そのもの。それがどうにも腹落ちしないようで、決断に至れないとのこと。ラズーリブルーの実車があればまた感想も違ったのでしょうが、この迷いはどことなく『他の選択肢が気になる』ときの表情のような気がします。
ああ、やっぱりダメでしたか・・・。イイクルマなんだけどなぁ。乗ってみたかったなぁ。
と、いうことで続きは後編で。
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