BMW U10 X2をくまなくチェックしてみる

BMW F39
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以前記事でもコメントしたとおり、あまり強い興味を持てなかった2代目U11 X2。今年3月にはデリバリーが開始されディーラーにも試乗車が配車されたようですが・・・結局わざわざ見に行くほどの気持ちにもならず。今年秋にはいよいよ残価設定ローン最終月を迎える=乗り換えるのであれば次車の検討開始時期ですが、F39に大きな不満はなく今のところ残債一括清算で終了が濃厚。後はメインドライバーであるヨメ氏の気分次第かな?

冷やかし気分で実車をチェック!

4人家族全員で押しかけ。子供おおはしゃぎ。そんな来訪者他にいなかったな・・・

そんな中、お付き合いしている正規ディーラーが札幌市中心部で展示・試乗イベントを開催。前回のU25 Coutryman発表イベントと同様にこれなら冷やかし気分でも行ける!と思い足を運んでみました。会場は札幌市中心部のホテル・商業施設に併設のホール。展示スペースにはデビュー直後の新型X2が一番目立つ場所でお出迎えでした。

写真で見るより『目に馴染む』外観

U11 X1と異なりこちらはヘッドライトにブルーの加飾が施されています
特徴的な形状のテールライト

いざ目の前にある実車を見てみると、思いのほか全体まとまっている印象を受けます。F39よりも間延びした印象を受けていたのですが、実車を見ると意外とそうでもない。F39よりもエッジが効いたディティールが全体的に引き締まっている印象を抱かせるのかもしれません。

X2の横にはコンポーネントを共有するU11 X1が並んでいましたが、キープコンセプト感が強いX1と比較するとこちらは次世代モデルのような出で立ち。アクは強いですが、思ったより悪くないなぁと見直しました。

伸びたリアオーバーハングも実車で見るとそこまでネガティブに見えません。低いルーフラインも相まって、奥に止まっているX1よりも伸びやかな印象を受けます。実際、リアオーバーハングが伸びて荷室が大きくなったことは好材料で、F39では子供用ストローラーを載せたらほぼ一杯になる荷室は余裕綽々。これなら4人家族程度であれば何も問題がないでしょう。

F39もボディサイズに対して荷室は結構余裕がある作りでしたが、実用性が更に向上したことは好意的に解釈すべきですね。

装備レベルは文句のつけようナシ

外観の変化より顕著なのは、各種装備レベルの向上・進化のほうでしょう。一気に現代化された内装・装備は先代より大幅に上昇した価格に見合った内容なのは間違いありません。パッと見、ダッシュボードに鎮座するカーブドディスプレイやOS9に注目が行きがちですが、実際に装備表をチェックしていくと相当に充実しています。先代F39から新たに追加された装備は以下のとおり。

  • ドライビングアシストプロフェッショナル(※追加機能のみ記載)
    • 高速道路渋滞時ハンズオフアシスト
    • ステアリング&レーンコントロールアシスト
    • レーンキーピングアシスト
    • レーンチェンジウォーニング
    • レーンチェンジアシスト
    • クロストラフィックウォーニング(フロント&リア)
    • スピードリミットインフォ
  • パーキングアシストプラス(※追加機能のみ記載)
    • パーキングアシスト(並列/縦列)
    • サラウンドビューシステム
    • リモート3Dビュー
    • リバースアシスト/後退時ステアリングアシスト機能
  • BMWドライブレコーダー
  • BMWデジタルキープラス
  • アダプティブMサスペンション
  • BMWキドニーグリルアイコニックグロー
  • サンプロテクション・アコースティックガラス
  • アダプティブLEDライト
    • ハイビームアシスタント
  • BMWライブコクピット
  • インテリアカメラ
これがあると地味に役立つのが洗車機に突っ込むとき。手洗いしないんかい。

こうして書き出してみると凄いですね・・・。上位モデルの現行3シリーズを超えるレベルの装備向上が果たされています。

個人的に興味深いのがアダプティブMサスペンションの標準装備化です。調べてみると、U11 X1/U10 X2より先にデビューしたU06 2シリーズアクティブツアラーのM SportsグレードもアダプティブMサスペンションが標準装備されています。

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先代F39の本国仕様やUKL兄弟のF系MINIはデビュー時よりアダプティブサスペンションをオプション設定していましたが、実は全くの別モノです。F39では電子制御式ダンパーを採用していましたが、U10は周波数感応式ダンパーを採用しています。

それぞれの違いを端的に言えば、電子制御式は車体センサーから得た情報を元にダンパーバルブを電子制御し減衰力を調整しますが、周波数感応式はダンパーの内部構造のみで減衰力を調整するもの。コスト的には後者のほうが優れていますが、前者の場合はリニアに減衰力を調整できる構造でドライバーの好みに応じてダンピングが調整出来るという特徴があります。

周波数感応式ダンパーの仕組みを平たく言えば、コーナリング中のロールなど、入力が微少なときは減衰力を高めてハンドリング性能を向上させる一方、ギャップ越えなど大きな入力を受けたときは減衰力を低くして車体の揺れを軽減させる仕組みです。前述のとおり電制式より構造がシンプル=ローコストで搭載可能なことから、標準装備化されたのでしょう。

ダンパー供給元はわかりませんでしたが、ドイツのZF社やカヤバなどが製品化しています。

写真では判りづらいですが、h/kロゴが光っており存在を主張しています(笑

併せてトピックなのが、メーカーオプションで設定されている『ハイラインパッケージ』の内容です。こちらも先代F39では本国のみ設定だったHarman Kardonスピーカーが装備されます。ただし注意すべきは、スピーカー数は12個と同じながらアンプ出力が360W→205Wに変更されている点です。205Wという数字に何か覚えがあるなぁ・・・と思ったら、我が家のF39に搭載のHiFiスピーカーシステムと同じ出力。ん?これはもしかして・・・?ちなみに兄弟車のU25 Countrymanは365Wなのになぁ。

またハイラインパッケージにはアクティブシート機能という見慣れないものも。何だコレは?と思ったら・・・マッサージ機能でした。コレは!と思い普段から肩こり背中痛に悩むヨメ氏に早速試してもらいましたが、感想は『うん、まぁ・・・いらないかな・・・』あらら。

写真撮り忘れたので公式画像より

もうひとつ変わった点として、メーカーオプションに設定されているパノラマガラスサンルーフも大きな1枚ガラスに変更されています。先代F39(やU11 X1に装備されているもの)と異なり内部からは分割線がない1枚ガラス。外観からはフロントガラスからそのまま大きなパノラミックルーフのように『見える』ようになっていますが、その代償として開閉機能がありません。

そもそもあまりサンルーフ需要のない日本ではあまり重視されないオプションですが、サンルーフ仕様のF39に乗る身としてはやっぱり開くほうがいいです。

乗ってみたら想像の範囲内なデキ

試乗時の様子(嘘)長男はカーブドディスプレイに興味津々

会場に到着するや否や試乗を勧められたので、展示車をじっくり眺める前に試乗をしました。

結論から言うと『良くも悪くも大きく変わってはいない』というものでした。事前情報を入れずに感覚だけでその内容を確かめてみましたが、F39の延長線から外れず全体的にブラッシュアップされたビッグマイナーチェンジモデルのような印象でした。

まず運転席に座って見える景色がF39のそれとほぼ一緒。以前記事のとおり、フロントオーバーハングが伸び、ボンネット先端の高さが増えてはいるものの、バルクヘッドの高さやAピラーやサイドウィンドウの形状はほとんど変わっていませんし、シートの位置や高さもF39とほぼ一緒。アームレストの高さや位置関係もほとんど変わっていません。

この辺の設計はF39からキャリーオーバーされていると見て間違いないと思います。言い換えればF39から乗り換えても何ら違和感なく普通に乗れるわけですが、メーターパネル以外の雰囲気があまりに一緒なので新鮮味はほとんどありません。後方視界の悪さも大きな差なし。

さらにシートの印象もほとんど変わらず。F39 M Sport Xのシートは妙に硬くて上半身各部位のサポートがどことなくチグハグで長時間乗ると疲れが溜まるシートでしたが、U10も相変わらず硬めでクッション性が弱く、表皮のレザーが突っ張る印象。サポート性は少しはマシになりましたが、F60のレザーシートほど優れていません。標準はアルカンタラと合皮のコンビネーションシートでそちらのほうが良い気がするのですが、ハイラインパッケージを選ぶと強制的にレザー仕様になってしまうのが惜しいポイントです。

エンジンルーム内の設計はほとんどF39と同一ですね

パワートレイン関係については、F39よりもスムーズさが向上しています。試乗後に気がついたのですが、トランスミッションが従来の8速トルコンATから7速DCTにチェンジされていました。以前代車で借りたF55/F56もそうでしたが、Getrag製のDCTは良く出来ていると思います。

DCTが苦手と言われる速度域の挙動も悪くなく、人間が歩く速度と同じぐらいの超低速域における振る舞いは極めてスムーズです。また、DCTの利点であるシフトチェンジの速さとダイレクト感が良い方向で作用しており、これが全体的な走行フィールの向上に繋がっているのでは?と感じます。全般的にあまり評判が良くないDCTですが、ことBMW UKL兄弟では見事にハマっているように思えます。

このタイヤいいなぁ。これにしたいなぁ。

次は乗り味の点。今回の試乗コースは市街地の単調なコースだったのでハンドリングを試すことは叶わず乗り心地が話題の中心です。試乗車はオプションの20インチ仕様。先代F39の225/40R20に対し、こちらは245/40R20と更にファットなタイヤを装着。それなのに乗り心地はなかなか良好でした。やはり新採用のアダプティブMサスペンションの効果が発揮されているようです。基本的にはF39の後継らしい引き締まった乗り味に感じるのですが、20インチ仕様のF39では思わず『うっ!』と声が出てしまう大きなギャップも苦ではありませんでした。

また、遮音性ははっきりと向上具合が認識できるほどに強化されています。アコースティックガラス採用だけでなく、パワートレイン関係のノイズがほぼ発生しないBEV仕様の設定に伴い車体全体の遮音性を高めたのではと推察されます。

タイヤはContinental EcoContact 6Qを装着。『Quiet』の頭文字が入るだけあり、とても静かなタイヤです。いつもならPIRELLI P ZEROがOE採用されるところをわざわざコレにしたところに明確な意思を感じます。ただ、これは好みの問題でしょうが相当静かなのでドラマチックさは少し欠けます。

運転して気になったのは3点。まず一つ目がステアリング径が更に太くなったこと。これは最近のトレンドなのかもしれませんが、日本人の手にはちょっと太すぎるのでは?と感じてしまいます。2点目は以前のU11 X1の記事でも触れたとおりセンターコンソール部のシフト操作部がLH仕様のままである点。やはり位置的に操作しづらいと感じるのは私だけでしょうか。これに関してはヨメ氏も否定的な意見。3点目はウィンカーレバーが常に中立に戻る仕様から一般的な仕様に戻った点。どういう意図なのかわかりませんが、戻って来ないから何ごとかと思ったよ・・・(笑

買い替えに値する1台か?

大混雑だったU25 Contryman展示会に比べ、今回は会場がかなり閑散空いており、車両をくまなくチェックできました。短時間ですが試乗もできましたので、買い替え検討するには十分な情報量でした。ディーラーさん、ありがとうございました。(ディーラー側としてはもう少し盛況を期待していただろうと思うと、何だか複雑な気分ですが・・・)

で、乗り換えるか?という本題については『わざわざ乗り換えるほどではないなぁ』という印象は最後まで拭えずでした。格段に向上した各装備は魅力的なものも含まれていますが、628万円という価格をどう考えるか。消費税率10%となった2019年10月当時、F39 20iXの価格が528万円でしたから、それよりも100万円も高くなったことに納得できるほどの進化はしていないと考えます。もっとも、F39最終モデルの20dxが598万円という値付けはもっと酷いものでしたが・・・。

為替事情や部品供給問題など、価格値上げは一定の理解を示さないといけないにせよ、BMWは一時期の自社登録車の乱発による代償でリセール相場を大幅に悪化させたまま現在に至り、新車にナンバー付けただけで大幅な値落ちをしますから、これじゃあますます売れな(おっとコレ以上は

と、ずいぶん批判めいた内容になってしまいましたが、F39から乗り換えでなく、価格に納得できる人であれば十二分にオススメできる仕上がりです。細かい不満は残りますが、全体的には良くできています。欲を言えばICEモデルももう一歩新しい驚きがあれば最高だったんだけど、今後BMWはICEモデルをどうするんでしょうかね。

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