前回の続き。新型BMW/MINIラインナップにもさほど興味が湧かず、X2は長期保有へまっしぐらかかなぁ・・・と思っていた矢先、フランス車とスウェーデン車に興味津々なヨメ氏からこんな発言が。
自分の部屋になるようなクルマが欲しい!
プジョーとシトロエンの、アレ!
聞いた瞬間は『すいません、ちょっと何言ってるかわかりません…。』と思いましたが、よくよく聞けば欧州LCV(Light Commercial Vehicle)車が気になりだしたようです。でもキャンプがしたい・車中泊がしたいという願望はなく、天気の良い日に遠出ドライブして→ラゲッジスペースでゆったり過ごすという使い方がしたいそうです。へぇ~。
魅力的な欧州LCV
ヨメ氏の言う使い方はさておき、クルマそのもののデキとしてもプロフェッショナル向け=良質な運転環境や走行性能、使い勝手を持つ欧州LCVは魅力的なモデル多し。かく言う私も幾度となくRenault Kangooの購入検討をしたものですが、今に至るまで一度も縁がありません。
最たる理由は『日本で浸透したKangooの世界観にどうにも馴染めない』という点です。冒頭のヨメ氏のようなスタンスなら馴染めるはずですが、私はそういうキャラじゃない・・・(似合わないという意味も含め)その点、長らくPSAグループのLCV国内導入を心待ちにしていたのは「そういう世界観がまだ確立されていないから」という理由に尽きます。
Kangooの独断場に「元祖」が殴り込み
初代モデルから日本正規輸入されていたRenault Kangooが元祖と思われがちですが、初代Citroen Berlingoがデビューしたのは1996年。Kangooは1997年にデビューですから、実はBerlingoのほうが先輩だということはあまり知られていないようです。Berlingoと同時に発売されたPeugeot版はPertnerという名称が付されましたが、現行(3代目)モデルから乗用がRifter、商用がPertnerと区別されています。
この2車が登場するまで、LCV=小型乗用車の前部にスクエアな荷室をくっつけたモデルが主流でした。それが、MPV型の独自ボディを持つモデルに進化したという点でこの2車の登場は大きな転換点でした。一方でプロユースを想定した車両構造を持ち続けており、幅1,200mmのユーロパレットをそのまま積載できる車体サイズに成長しながらも、基本的なスタイルは変えずに四半世紀に渡って進化を続けています。
前輪駆動コンパクトからMPVを派生させる類似例として、日本でも1996年に登場したホンダ・ステップワゴンがあります。シビックをベースにFF車の優位=フロアが低く乗用車に近い運転環境を持っていること、ホンダの懐事情からシンプルな構造に終始したこと、リーズナブルな価格帯だったことで大ヒットしました。
一方、商用ユースを一切考慮しない仕立てだったことが好意的に受け入れられたことで、以後ミニバン=商用ユースを徹底的に廃されることがスタンダードとなり、欧州LCVとは大きく異なるモデルになっています。
最新型は乗用車としても非常に魅力的
話をRifter/Berlingoに戻します。3代目となる現行型はPSAでお馴染みのEMP2をベースとしたプラットフォームを採用したことで、最新のパワートレインやコンポーネントを採用しています。ユーザー目線でその恩恵を感じる部分、右ハンドルモデルでもようやくまともに車検証が入るグローブボックスが設置されたことでしょうか(それだけじゃないぞ 笑)
商用車の利点である長時間乗車しても疲れにくい運転環境、貨物フル積載を考慮した安定性はそのままに、乗用モデルらしい使い勝手を加味しながら仕立てられている点は従来通り。
パワートレインはPSAグループお馴染みの1.5L BlueHDiディーゼルエンジンとアイシン製8速ATの組み合わせです。このエンジンですが、現在ヨーロッパでは商用パネルバンにしか搭載されていません。
乗用仕様は?と思ったら、2021年にBEV専用モデルに移行したことでディスコン。航続距離の問題があるため将来的にHEVモデル(PHEV?)が追加されるとの噂もあるようですが、どちらにせよICEモデルはこれが最後になるでしょう。
なお、ヨーロッパ仕様には6速MTや1.2L PureTechガソリンエンジンの設定もありましたが、こちらは日本導入されておりません。
今や法令上でも「当たり前」となったADASはLCVベースでもきちんと装備。ACC・自動ブレーキ・レーンキープアシスト・ブラインドスポットモニターなど基本的なものは全て備わっています。
ただし前方監視システムのベースはカメラのみ。208や308はミリ波レーダーとカメラが組み合わされたシステムが搭載されていますが、カメラのみであれば性能が落ちるのでは?と思いきや、EuroNCAPのスコアを見る限りは大幅に劣るものではありませんでした。
実際にチェックしてみた
『当分買い替えはない』と思っていた矢先のこの話。X2購入時は3人家族だった我が家も昨年もう1人増え4人家族に。まだまだ子が小さいのでX2でも問題ないと思っていますが、もう1人増えたら買い替えは必須。このRifter/Berlingoは買い替え候補としてかなり有力なモデルなのは間違いありません。
そして冒頭に引き続き、ヨメ氏が珍しく自ら『実車を見てみたい』と言うので、実際にディーラーへ赴きチェックしてみました。
Peugeot RifterとCitroen Berlingoの違いは?
まずチェックする点として、兄弟2車の違いは何があるのか?という点です。
エクステリアは基本構造は共通ですが、Rifterは旧型2008やマイナーチェンジ前3008に似た顔つき、BerlingoはC4スペースツアラーやC3に似た顔つきに仕立てられています。サイド部の処理も異なり、SUVテイストのRifterはフェンダーアーチにとサイドアンダーボディ部が樹脂パーツで覆われています。一方のBerlingoはシンプルになっており、サイド部にAirBumpだけが配置され、Aピラーがブラックアウト処理されています。ルーフレール形状も両車で異なります。
インテリアもベースは一緒ですが、大きな差異としてRifterがi-Cockpitを採用しているのに対し、Berlingoはコンベンショナルな仕立て。i-Cockpitは最初こそ違和感がありますが慣れればそこまで気にならないなぁというのが感想ですが、着座位置の高いLCVの場合はBerlingoのほうが良い気がします。
シートの構造は一緒ですが、Rifterは落ち着いたトーン、Berlingoはビビッドなトーンでそれぞれのキャラクターを明確にしています。細かいポイントですが、BerlingoのシートにはISOFIXアンカーのイチを示すマーキングが施されているところを見ると、ファミリー向けのイメージを強く打ち出しているのも興味深いところです。
フットワークはかなり違う??
それよりも気になるのが中身。ベースが同じでも味付けは相当違うだろう・・・と思い色々と見て聞いて調べてみると面白い違いがわかりました。まず両車で異なる点として足回りのセッティングやタイヤチョイスが異なることです。
Rifter Allure | Rifter GT | Berlingo Feel | Berlingo Shine | Berlingo Shine XTR | |
---|---|---|---|---|---|
タイヤサイズ | 215/65R16 | 215/60R17 | 205/60R16 | 205/60R16 | 205/55R17 |
外径換算 | 686.4mm | 689.8mm | 652.4mm | ← | 657.8mm |
タイヤ銘柄 | MICHELIN PRIMACY 3 | Goodyear Efficient Grip Performance | MICHELIN PRIMACY 4 | ← | ← |
まずタイヤサイズから。どちらもベースモデルが16インチ、上位モデルが17インチというのは共通ですがRifterのほうが外径が大きい(ひとまわり大きい)タイヤを履いています。そしてタイヤ銘柄も細かな違いがあります。
現状、Rifter/Berlingo共にコンフォート系銘柄が奢られていますが、Rifter GTのみ非MICHELIN銘柄。ちなみにRifterの初期導入モデルはMICHELIN LATITUDE TOUR HP、BerlingoはMICHELIN ENERGY SAVER+が装着されていたようで、今のラインナップ以上にキャラ分けしていたんですね。
外径20mmほど高いタイヤを履くRifterは更に足回り自体も10mm程高い設えとなっており、最低地上高が180mmになっています。そして極めつけに、同社のSUVモデルでお馴染みのAdvanced Grip Controlが搭載されている点が大きな違いと言えます(※本国ではBerlingoもオプション搭載可能)
言うなればRifterのほうがSUV向き、Berlingoのほうがアーバン向きというキャラクターの差をつけているというところでしょうか。
新たに登場したロングモデル
そして先日、ロングモデルも日本に導入されました。本国では元々設定のあったモデルで、ホイールベースから延長され3列目シートが追加されています。この3列目シートは脱着が可能となっており、使用しないときには取り外すことで広大なラゲッジスペースを備えることができます。外したシートをどこに置いておくんだ?という話になりますが・・・(笑
その代わり、ベースモデルのウリでもあるModuTopと呼ばれるパノラミックルーフ設定がありません。我が家のX2はサンルーフ装着車で子供ウケ抜群ですから、3列シートよりもコッチのほうが魅力かなぁ。
Rifter Long GTに試乗(ヨメ氏が運転)
訪れたのは以前からお付き合いのあるPeugeot/Citroen併設ディーラー。展示車はBerlingoで試乗車はRifterとのことだったので、今回はコレに試乗です。もしコレを購入した場合、メインオーナーはヨメ氏。そこで今回の運転はヨメ氏に任せ、私は後席に座ってみることにしました。
ちなみに試乗したのは2月後半。この時期の路面は積雪量もピークで道路状況は1年で一番荒れている状態。長期間積雪と踏み固めが連続し、積雪により道路幅も狭くなり取り回しに苦労するタイミングですから、言い換えればこの時期に走ってみて問題がなければ大丈夫と判断できます。
パワートレインは間違いなし
まずディーゼルエンジンの音・振動関係はどうか?という点については、何も心配ありませんでした。他のモデルでもそうでしたが、このDV5エンジンはとても良く出来ている印象を受けます。それこそ何も言われずに後席に乗ったとしたら、気がつかないんじゃない?と思う位です。
ヨメ氏の運転は『加減速のメリハリが強い(※ポジティブな言い方で 笑)』タイプで、比較的アクセルを強めに開き、ブレーキもしっかり踏むタイプ。その運転スタイルにディーゼル特有の高トルクがどう作用するかな?と思っていましたが、トルクの出方が唐突に出過ぎない仕立てで首が前後に揺さぶられるようなことにはならず。8速ATものったりとした変速ではなくキビキビと変速していく様子が後席でも感じられ、印象は悪くありません。
ボディしっかり、フットワーク上々
で、結果から言うと・・・全く問題ありません。凸凹が目立つ生活道路の路面でも、足回りはしっかりと仕事をしてくれています。感心なのが、これだけの大きな箱型ボディなのに、さんざんな悪路でもミシリという音ひとつせず走る様子。剛性感を強く感じます。
国産ミニバンであれば多少ミシミシとした音が出ても不思議ではないシチュエーション。音なんて・・・と思うかもしれませんが、終始音振動が続く環境は疲れやストレスの要因になりますから、この仕上がりは満足できます。
特殊な路面シチュエーションの中での試乗なので足回りの良さがわかりづらいものの、印象値としては多少の路面変化を車体に伝えつつ上手にいなす位の乗り味。これは嫌いではありません。運転していたヨメ氏も同様の感想で、フラフラと走る感がなく頼もしいという感想。同じ道でBerlingoも試乗出来ればよかったのですが。
ちゃんと座れる良心的なリアシートは希少な存在
後席は前後方向の長さは十分あり、シート自体の設えも全体で支えてくれるもの。このシートであれば長時間乗っても不満にならない仕上がり。2列目は3座独立の形状となっており、座った瞬間は少し窮屈に感じるのですが、10分も乗れば気にならなくなります。
その理由はしっかりと決まった姿勢で座っていられる設えになっているから。座面も背もたれも良く出来ており、だらしない着座姿勢にならないからでしょう。この辺は国産ミニバンには絶対に味わえない世界。
これなら何も問題ないかも
最初こそロングモデルのサイズ感に少し圧倒されていたヨメ氏も、15分乗るうちにサイズ感の違和感が薄れ何も問題なく取り回せるとの感想。後席の印象もとても良く、車体やパワートレイン、足回りも良く出来ているという印象を受けたので、X2の代替としては結構イイ感じじゃないか!というのが私の感想です。でも、3列である必要性はないかな。我が家では2列シート車で十分です。
ヨメ氏のひとことに再度驚く!
そんなこんなで、自分から欲しいと思ったわけでもないRifter/Berlingoに興味と関心と物欲(笑)がくすぐられ・・・と思っていた矢先、ヨメ氏から驚愕のひとことが。
確かにイイクルマだったけど、試乗して気がついたことがあって。
私、やっぱり背の低いクルマのほうが好きだわ!
ステーションワゴンのほうが性に合う。
な、なんだってーーーーーー!!!?
もう、聞いた瞬間に爆笑。大どんでん返し。これまたよく聞くと、スペースの広いクルマは確かに使い勝手が良いし、Rifter/Berlingoに至ってはクルマ自体もよく出来ていると思ったそうなのですが、もっともクルマの好みは背が低めでタイト感のあるほうがやっぱり好きだということに気がついたようです。これで夫婦揃ってステーションワゴン推しなのが確定(笑)どおりでRifterの試乗終わった後にしげしげと眺めているクルマが新型308SWだったわけだ。
と、いうことで・・・今回はけっこうグッときた欧州LCVの夢は儚く消えていきました・・・。
コメント
私の職場にベルランゴを乗っている者がなんと二人もいます。
申し合わせたわけではなく、たまたま同じクルマという・・。
そんなこともあるのかと不思議に思いつつ、はたしてどういう魅力があるクルマなのか、私としては今一つ把握していなかったのですが、この記事で理解度が深まった気がします。
背の低いクルマが好きというオチをつけてくれたヨメ様。
“男らしくて”結構なことだなぁと感心しております。
(駄言ですかね。すみません)
標準仕様の価格帯は国産3列ミニバンとそう変わらないので、3列目が不要であれば十分魅力的な選択肢と思います。もっとも、人と被るのが嫌という向きであれば尚更でしょうね(←我が家はコレかもしれません 笑)
ちなみにヨメ氏の本命は前からVolvoのステーションワゴン(V90)です。VW Passatも私が提案して購入したのですが結構気に入っていたとのこと。男らしいというより、所帯じみたものがあまり好みじゃないのかもしれません。
V90ですか。なるほど。
“90”というところにこだわりを感じます。いいですね。
ますます結構なことです。